約 5,040,925 件
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/728.html
【進化させない理由】 ◎ニャースの場合 「マスターはなんで にゃーを進化させてくれないのよさ?」 「俺は可愛いお前がすきなんだよ。 進化したら美しくて優雅なペルシアンになっちゃうだろ?」 「ふにゃーん……(いわゆるロリコンにゃね)」 「……(ものひろいの特性がカネになるってのもあるが)」 ◎アーボの場合 「どうして進化させてくれないんですかぁ~?」 「お前はこれ以上でかくなると困るから。 最近寝ぼけてか知らんが、俺を喰おうとしてるだろ?」 「失礼なっ、寝ぼけてないですよぉ~! ますたぁのことが食べちゃいたいくらい大好きなんですからぁ~」 「故意ならなおさら進化させられねぇよ」 「恋ですよぉ」 「上手く纏めたつもりだろうが、とにかく進化はさせんぞ……多分」 ◎ベイリーフの場合 「マスター、私はなんd「花粉症だから」」 「え?」 「花粉症」 「……そうですか」
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/606.html
【私立萌えもん学園 生徒名簿一覧より抜粋】 ver1.15 3年生 ↓表を作成予定 現在工事中 番号 名称 学年 クラス 所属1 所属2 所属3 得意科目 苦手科目 備考 カイオーガ 3 A 水泳部部長 ー ー 英語・古典 理科・美術 傘常備、お嬢様の三竦み キングドラ 3 A 女子バレー部(マネ) 黒魔術研究会 理科 音楽 弟:シードラ シャワーズ 3 A 生徒会庶務 図書委員 数学・英語・国語 情報・機械系統 双子のイーブイ ソルロック 3 A 元バレー部員、サボりがち、足に後遺症 ドクゲイル 3 A 数学・理科 体育 アゲハ家分家 ハクリュー 3 A 剣道部部長 クラス委員長 理系全般 ほぼ無し(若干文系) 全国レベルの剣道の腕前 ハピナス 3 A 生徒会副会長 体育 重度の銃器マニア アゲハント 3 B 剣道(マネ) 国語 英語 アゲハ家本家 サンダー 3 B 生徒会会長 ニコ中、度々料理部に乱入 ペルシアン 3 B 生徒会会計 女子バレー部 数学・英語・体育 古典 お嬢様の三竦み マンキー 3 B 蹴撃部 国語 英語 レジスタンズ ユキメノコ 3 B 茶道部 古典・日本史 理系科目・実技 ☆YAMATONADESHIKO☆ ボーマンダ 3 C 女子バレー部 体育 ミロカロス 3 C 環境整備委員 数学・物理 水泳部へ勧誘? ドードリオ 3 C チア部主将 妹・ドードー グラードン 3 D 女子バレー部部長 体育 音楽・美術・家庭科 自然愛護心○ ヘルガー 3 D 保健委員 体育・音楽 数学・理科 妹:デルビル、喧嘩三昧、教師嫌い バンギラス 3 D 女子バレー部 クラス副委員長 数学 ネンドール 3 E 女子バレー部 裁縫部 保健委員 国語・生物・化学 数学・英語 ペルシアンの親友 マニューラ 3 E 風紀委員 テニス部 英語 お嬢様の三竦み ラティアス 3 E カードゲーム同好会 体育 兄:ラティオス、瓜二つ スターミー 3 生徒会庶務 文芸部 日本史・世界史 物理 口癖:やっちゃった(うっかり (ポニータ) 3 生徒会書記 番号 名称 学年 クラス 所属1 所属2 所属3 得意科目 苦手科目 備考 エアームド 3 A 国語・情報 英語 助っ人キャラ サワムラー 3 B 蹴撃部 世界史 数学 利他主義、音楽性○ ランターン 3 B 料理部部長 ニコ中 ワンリキー 3 B 蹴撃部 体育以外の教科 レジスタンズ ルナトーン 3 C ほぼ全教科 年齢不詳 クレセリア 3 D カードゲーム同好会 女尊男卑、極度の胸&ゲームマニア、どう見ても女にしかry モジャンボ 3 D 野球部主将 ー ー 理科・体育 国語・家庭科 ナンパ師・あだ名『ジャンボ隊長』 ケンタロス 3 陸上部 体育 英語 レジスタンズ ◇未設定 ♀ ♂ 2年生 番号 名称 学年 クラス 所属1 所属2 所属3 得意科目 苦手科目 備考 カポエラー 2 A 蹴撃部 国語 国語以外 カラサリス 2 A 体育 アゲハ家 ニドリーナ 2 A 生徒会次期書記 家事○、ニドリーノと幼馴染 マユルド 2 A 体育 アゲハ家 ズバット 2 B 生徒会次期副会長 図書委員 国語・美術 英語 美術部にスカウト チリーン 2 B 図書委員 国語 体育 由緒正しき和の家系? フシギバナ 2 B 女子バレー部 英語・体育 数学 ライチュウ・ロコンと同居 ホウオウ 2 B 環境整備委員 国語・日本史・政治経済 体育 実家は神社 カモネギ 2 C 生徒会次期会長 剣道部 運動○、勉強× モンジャラ 2 C 図書委員 国語・理科 体育 植物愛護心○ ワタッコ 2 C バドミントン部 国語 英語 三つ子草娘 サンドパン 2 C 文系科目 爪の扱いに定評がある ポポッコ 2 D バスケ部 英語 数学 三つ子草娘 ヤジロン 2 D 裁縫部 美化委員 国語・生物・化学 体育 はうぁっ!? ヤンヤンマ 2 D 風紀委員 音楽 体育 メガヤンマ財閥 リザードン 2 D 体育 病弱 ギラティナ 2 E クラス委員長 社会 龍霊神社の幽霊巫女 ※1 コイル 2 E 生徒会次期庶務 ハネッコ 2 E バレー部 数学 国語 三つ子草娘 プラスル 2 E チア部 放送委員 数学 国語 勝利の女神・+ ポリゴンZ 2 E 生徒会次期会計 理系全般 一般教養 電波を受信可能、PC系に強い マイナン 2 E チア部 放送委員 数学 国語 勝利の女神・- 番号 名称 学年 クラス 所属1 所属2 所属3 得意科目 苦手科目 備考 シードラ 2 A クラス委員長 理科 体育 姉:キングドラ、妹:タッツー ダイノーズ 2 A 美術部 国語、社会 数学、理科 ポリゴンZに鬼絡みされる ニドリーノ 2 A 理系科目 社会 文科系部にたまに顔を出す アーボ 2 B カードゲーム同好会 図書委員 英語・理科 音楽・美術・体育 残念な程のニコ厨 ケーシィ 2 B サッカー部 数学 国語 ツッコミ担当 ザングース 2 B 剣道 歴史 騎士道精神、レジスタンズ プクリン 2 B カードゲーム同好会 宝塚スキー ヘラクロス 2 B バスケ部 図書委員 理科物理 美術 ゲンガー 2 C 国語・体育 英語・数学・日本史 悪役トリオ サンダース 2 C サッカー 剣道 国語・社会・体育 得意科目以外 ハクリューと幼馴染 ストライク 2 C 剣道部次期主将候補 英語 カモネギと幼馴染 カビゴン 2 D 料理部 家庭科 体育 2留らしい、妹にゴンベ グラエナ 2 D 風紀委員 ヤンヤンマの護衛 ◇組未設定 ♀ ♂ 1年生 番号 名称 学年 クラス 所属1 所属2 所属3 得意科目 苦手科目 備考 オオタチ 1 A 国語・英語 音楽 ツンデレ疑惑 ケムッソ 1 A 英語 数学 アゲハ家 ドードー 1 A 演劇部 数学 姉・ドードリオ ナマケロ 1 A 科学 レジスタンズ ポッチャマ 1 A 水泳部 実験・実技 英語 結論:モーゼ ユキワラシ 1 A 飼育委員 家庭科 体育 一人称「ユキ」 サイホーン 1 B 剣道部 クラス委員長 剣術修練者 ドククラゲ 1 B 裁縫部 クラス書記 サレナ ネイティオ 1 B 風紀委員 美術部 体育 とぅー パウワウ 1 B 保健委員 保健・体育 英語・地理・公民 運動神経の良さを隠している ピカチュウ 1 B 裁縫部 HR委員 ドククラゲの着せ替え人形兼恋人 マルマイン 1 B 風紀委員 陸上部 体育 理科 早口の長口上 ライチュウ 1 B 陸上部 ぬいぐるみ好き・勉強嫌い ロコン 1 B カードゲーム同好会 社会(日本史) ライチュウと住んでる グレイシア 1 C 図書委員 リーフィアと対称的な能力 ゴンベ 1 C 音楽・美術 体育 生徒会を手伝ったり デルビル 1 C 数学・理科・家庭科・美術 体育 ハピナスと交流あり ムウマージ 1 C 黒魔術研究会 英語 外国語以外 一人称「ムゥ」、自称魔法使い見習い ヨノワール 1 C ハッピーエンド好み リーフィア 1 C 保健委員 体育・家庭科 ←特に裁縫 エレブー 1 D サッカー部(マネ) 数学 国語 凡才?、生徒会を目指す メノクラゲ 1 D 演劇部(マネ) 飼育委員 天才の蕾 ルージュラ 1 D 演劇部 英会話 英語・国語 帰国子女、一留 エネコ 1 E 体育・美術・音楽・英語 数学・理科・古典・歴史 悪役トリオ オニスズメ 1 E カードゲーム同好会 体育 国語 姉:オニドリル ミニリュウ 1 E 剣道 理科 体育 姉:ハクリュー・カイリュー 番号 名称 学年 クラス 所属1 所属2 所属3 得意科目 苦手科目 備考 コイキング 1 A 国語 数学 レジスタンズ セレビィ 1 A 理科 英語 NG:小さい系統の単語 ヨルノズク 1 B 孤立主義・人とは広く浅く オドシシ 1 C 蹴撃部 みんなのアイドル☆ ミカルゲ 1 D 黒魔術研究会 図書委員 文系 理系 どS カゲボウズ 1 E 数学・理科 国語・家庭科 悪役トリオ テッポウオ 1 射撃部 地雷スタンパー ヤミカラス 1 射撃部 数学 叔父:ドンカラス ♀ ♂ 教師名簿一覧表 番号 名称 担任 所属1 所属2 所属3 担当科目1 担当科目2 担当科目3 備考 ♀ ピジョット 3B 生徒会監査 国語 生徒の秘蔵写真を大量所持、No.1 ♀ ラプラス 蹴撃部顧問 数学 格闘技に興奮を覚える、オカルト狂信者 ♂ ウソッキー 2C 剣道部顧問 カードゲーム同好会 レイヴン・リンクス、面倒嫌い、ウソッキョン ♀ ウツボット 2A 科学部顧問 化学 生物 大食い、虫好き、エロ担当?、結論:食べる人 ♀ キュウコン カードゲーム同好会顧問 美術 虫嫌い、赤色好き、白い手袋、No.2 キノガッサ 校長 旧軍人、生徒の完璧な把握、胞子注意 ドサイドン 教頭 旧軍人、堅物 ♂ ドンカラス 射撃部顧問 物理 化学 射撃の名手 ♀ オニゴーリ 料理部顧問 世界史 生徒会と面識あり ♀ フーディン 3A 政治経済 両刀 ♀ アブソル 保健 保健 アンチ風紀! ♂ ゴローニャ 美術部顧問 英語 剛力、蝶☆鈍感 ♀ ハリテヤマ 柔道部顧問 体育 真面目、予期せぬ不幸、隠れきょぬー、No.3 ♀ カイリュー 3D 女子バレー部顧問 物理 数学 妹:ハクリュー・ミニリュウ、酒好き ? スイクン 地学 失踪癖 ♀ トロピウス 1B 裁縫部顧問 倫理 あらあらうふふ ? メタモン 生活指導担当 生物 バシャーモ&教頭「……」 ♂ バシャーモ 1A 野球部顧問 体育 保健 小麦色のイケメン教師(独身) ♀ ゴウカザル 空手部顧問 体育 保健 特技:孫悟空張りの棒術 ♂ ラティオス 水泳部顧問 道徳 童顔、甘党 ♀ チルタリス 1E 合唱部顧問 音楽 歩くα派 ♀ フライゴン 2B 飼育委員担当 英語 ジョウト弁使い ♀ オニドリル 地理 学園OG ♂ バクフーン 吹奏楽部顧問 音楽 ♂ ハッサム 1C 風紀委員担当 古典 ♀ パラセクト(古典) モルフォン(生物) ♂ 【担当教科一覧表】 めちゃめちゃ割り振り適当です。指摘要望受け付けます; 1A 1B 1C 1D 1E 2A 2B 2C 2D 2E 3A 3B 3C 3D 3E クラス担任 バシャーモ トロピウス ハッサム チルタリス ウツボット フライゴン ウソッキー フーディン ピジョット カイリュー 国語(現代文) ピジョット ピジョット ピジョット ピジョット ピジョット 国語(古典) 数学 カイリュー カイリュー カイリュー ラプラス ラプラス ラプラス ラプラス ラプラス カイリュー カイリュー 英語 理科(物理学) ドンカラス ドンカラス ドンカラス ドンカラス ドンカラス 理科(生物学) - - - - - メタモン メタモン メタモン メタモン メタモン ウツボット ウツボット ウツボット ウツボット ウツボット 理科(化学) メタモン メタモン メタモン メタモン メタモン ウツボット ウツボット ウツボット ウツボット ウツボット ドンカラス ドンカラス ドンカラス ドンカラス ドンカラス 理科(地学) - - - - - - - - - - スイクン スイクン スイクン スイクン スイクン 社会(地理) オニドリル オニドリル オニドリル オニドリル オニドリル 社会(日本史) ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー ウソッキー 社会(世界史) - - - - - オニゴーリ オニゴーリ オニゴーリ オニゴーリ オニゴーリ 社会(政治経済) - - - - - フーディン フーディン フーディン フーディン フーディン 社会(倫理) - - - - - - - - - - トロピウス トロピウス トロピウス トロピウス トロピウス 体育(球技) 体育(陸上) 体育(武術) 音楽 チルタリス チルタリス チルタリス チルタリス バクフーン バクフーン バクフーン バクフーン バクフーン バクフーン - - - - - 美術 キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン キュウコン 技術(情報) 家庭科 【部活動一覧】 こっちも今後まとめて行きます。 野球部 陸上競技部 水泳部 剣道部 女子バレーボール部 バスケットボール部 バドミントン部 銃撃部 蹴撃部 空手部 チアリーディング部 料理部 吹奏楽部 合唱部 軽音楽部 演劇部 茶道部 裁縫部 美術部 科学部 黒魔術研究会 カードゲーム同好会 ※1 性別不詳 【補足】 ぺるが現時点で把握している、あるいはSSロダに既に設定が上がっているものから抜粋。抜けていたら随時報告をお願いします 学年とクラスだけで現在判明しているものをソート。学年・クラスの設定がない(あるいは見落とした)モノに関しては未設定。 場合によっては、総監督、作者である39氏が既に設定しているかもしれません。 【更新履歴】 Ver1.00 公開 Ver1.10 更新履歴を設置 08/01/23 Ver1.11 以下の生徒を追加 ヘルガー、マンキー、ワンリキー、ホウオウ、デルビル、ネイティオ、マルマイン、ロコン、ライチュウ、 メノクラゲ、ゴンベ、ルージュラ、エレブー、ムウマージ、ヨルノズク、コイキング 名称:カビゴンの平仮名を修正、ヨノワールをC組に、他一年生の組を設定、他細部更新 08/01/24 Ver1.12 以下の生徒を追加。 ネンドール、グラードン、フシギバナ、ケーシィ、ゲンガー、ドククラゲ、ピカチュウ、サイホーン、エネコ、リーフィア ヤミカラス、カゲボウズ、カイリュー、スイクン、トロピウス 教科一覧を追加・クラス担任を整理、他細部更新 08/01/25 Ver1.13 以下の生徒を追加。 ボーマンダ、バンギラス、ヤジロン、ドードー、グレイシア、ミニリュウ、 パウワウ、テッポウオ、メタモン、バシャーモ、ゴウカザル クラス不問の生徒一部を設定、教科担当教師表を試験的に追加、ほか細部更新 08/01/28 Ver1.14 以下の生徒を追加。 ラティアス、アゲハント、ドクゲイル、カラサリス、マユルド、ヤンヤンマ、ワタッコ、ポポッコ、ハネッコ、 シードラ、グラエナ、ケムッソ、オドシシ、ラティオス、チルタリス、フライゴン 指摘箇所を修正、未設定クラスの生徒を一部クラス配置、クラス別にソート、他細部更新 08/02/03 Ver1.15 以下の生徒を追加。 キングドラ、ミロカロス、オニスズメ、バクフーン、オニドリル 指摘箇所を修正、一部の生徒をクラス配置、ほか細部更新 08/02/09 Ver1.16 以下の生徒を追加。 ドードリオ、プラスル、マイナン、ギラティナ、ミカルゲ 指摘箇所を修正、一部の生徒をクラス配置、部活動項目を設立、他細部更新 08/02/22
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/491.html
ストーム7氏投稿作品 今日のトキワジム挑戦者は - 人です。 昨日の挑戦者は - 名です。 これまで - 人の挑戦者がトキワジムに訪れました。 そろそろ創作再開しようかと考え、新シリーズ構想中。 『Scarlet Fighter, Crimson Revenger』 一人のマスターと6人(+不特定多数)の萌えもん達の話。 通称ゴーグルシリーズ。 『お風呂場ぱにっく!』前編 中編 後編 『ゆく年くる年』 『たまにはオシャレもしてみない?』 『炎の伝説』前編 後編 『ハジマリノヒ』 『出会い』前編 後編 『節分の日に』 『Rast Revenge』 プロローグ/1/2/3/4/5/6/7/8/エピローグ 『リストラ大騒動!』 『風邪といえば林檎』 『Final Dreamer』プロローグ/1 『コスプレ祭投稿作品』 『みぃの奇妙な冒険 第1部? 異次元編』 上の作品から3年後。新たな主人公と仲間たちの物語。 前作のキャラも大暴れする予定です。 第一話 第二話 番外編・フライゴンの変身 1 2 番外編・Before Story 『旅は紅茶の香りとともに』 さらにみぃ編から1年くらい後? 3人目の主人公が喫茶店の店員を求めて世界を走り回る物語。 『ティーカップ、一杯目』 『ソーサー、二皿目』前編・後編 『萌えもん学園・エアームド編?』 企画モノ『萌えもん学園』内での作品。 たたかう情報通の学生エアームドの愛と友情と熱血な物語。嘘ですごめんなさい。 『放課後、一緒に帰ろう』 『今は、この距離が心地よくて』 『メイドin生徒会』 『情報通のバレンタインデー』 『その他小ネタ・記念ss集』 細かいところで作った小ネタなどを随時載せていきます。 昔あげたものもそのうちサルベージ予定です。 『クリスマスss』 本ページ7777Hit記念ss 1 2 3 4 5 6 7 200のひと氏・曹長氏・シーク氏との合作『2008年忘年会』 感想等にぜひお使い下さい。 test -- 名無しさん (2007-12-30 21 12 48) お風呂場パニック 前篇 ×気にぶつかる→○木にぶつかる -- sitora (2008-03-10 16 32 14) テンポ良く読めました、 文章に違和感がないので読みやすかったです(感想入れ忘れてました、スイマセン) -- sitora (2008-03-10 20 56 46) >たまにはオシャレも〜 ちょwwwヤwwマwwトwwwww -- クレしん疾風伝 (2008-05-20 22 07 02) シャワーズの可愛さにやられた私がいるw ゴーグルシリーズ最高ですw -- Type-nanashi (2008-06-27 23 15 01) リストラ大騒動が一番気に入りました。 これからも頑張ってください。 -- 774 (2008-10-13 15 53 19) 閲覧者6000人突破おめでとうございます(私が踏みました) これからも面白い作品を作ってください。応援してます -- 200のひと (2008-11-11 09 06 56) 7777達成おめー -- 名無しさん (2009-01-26 15 31 06) 20000hitおめでとうございます。 応援してます。頑張ってくださいっ -- 名無しさん (2010-08-08 21 47 30) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/1189.html
カントー唯一の港町、クチバ。 多くの人がここからカントーを離れ、またここからカントー内を旅してゆく。 そんな、とめどなく出会いと別れを紡ぐ町で、俺は旅の目的の一片を達することになった。 クチバシティに着いた俺たちは、早速一時の職場となる萌えもんセンターへ向かった。 その受付で資格証明証を示し、手続きをしながらのこと。 「旅の疲れもあるでしょうけど、早速往診に行ってほしいところがあるのよ」 「往診に?来たばかりの俺にですか?」 基本的に萌えもんの治療のためにセンター職員が出張るのはジムくらいのもの。 でなければ何のために設備を整えたセンターがあるのか分からない。 それにジムも基本的に正規の職員だろうといきなりやってきた勝手の分からない人間が行くようなものではない。 俺の問いかけに受付のジョーイさんは、 「簡単な診察だけで済むわ。 別に動かせないほどの重態の子が居るとかじゃないから安心して。 ……ごめんなさいね。行って欲しいのは……」 微妙にはぐらかして、行き先を説明するジョーイさん。 このときはまだ、最後の謝罪の意味が分からなかった。 最も、すぐに思い知ることになったが。 ジョーイさん自身緊急事態ではないと言ったので、ひとまず仕事の割り振りなどの説明を一通り聞いてから向かうことになった。 とはいっても、仕事自体は全く一緒で設備の構造もカントーで統一されているのですぐに済んでしまった。 ひとまずの仮住まいとなる空き宿舎に荷物を置き、センター玄関を出たところで。 「うわっと!」 「わっ、ごめんなさい!」 こちらは行き先への道順を頭の中で反芻しており、相手は相手で何か考え事をしていたのだろう。 センター利用らしい帽子を被った少年と派手にぶつかってしまった。 幸い二人とも歩きだったためよろめくだけで済んだが…… 「ごめんな、考え事をしてた」 「いえ、こちらこそ…」 と、互いに簡単に謝って済むはずだったのだが…… 「あーーー!!」 唐突に響き渡る声。発信源は俺の腰のモンスターボール。 「うわ、急にどうしたリザード!」 反射的で問いかけた俺の声も無視して飛び出してくる。 そして、少年にびしっと指を突きつけ、 「ゼニガメ連れてったやつだ!」 興奮して暴れだしかねないリザードを宥めてすかしてもちあげて、なんとか一旦ボールに戻して。 改めて、俺はその帽子の少年―――レッドと、あいているセンターの椅子に腰を下ろした。 「君がマサラタウンから旅を始めた子だったのか。 俺はヒロキ。萌えもんセンターの一職員で、ちょっと訳ありでカントーを回ることになってる。 君達の後でこの子の身柄を譲り受けたから、実質君達の後輩に当たるわけか」 「もう知ってると思いますけど、僕がレッドです。 オーキド博士からゼニガメを渡されて、萌えもん図鑑の完成ともえもんリーグ制覇を目指してます」 互いに簡単に自己紹介と事情の説明。 割と大人しめで、だがその目にはっきりと強い意志が覗く、見る人が見れば口を揃えて先が楽しみと評するだろう少年。 それが、俺が彼から受けた第一印象だった。 そして、いよいよお待ちかねの対面タイム。 「もういいよ、出ておいでリザード」 「カメール、出て来ーい」 二つのボールが投じられ、赤と青の影が形を作る。 現れた二人はしばらく向かい合ったまま黙って立っていた。 俺もレッド少年も何も言わない。横から口出しなど必要ないから。 やがてどちらとも無く…… ……何故か始まる取っ組み合い。 「わー、ストップストップ! カメール、落ち着いて!」 「何故にそうなる! いいからやめろって、リザード!」 二人して慌てて止める、その声も届かず繰り広げられる大乱闘。 緊急事態と見て飛び出してきた俺のリーフィアにラルトス、レッド少年のオニスズメにニドリーナも、 割って入るに入れずまごまごするばかり。 あちこちから何だ何だと野次馬が集まってきて騒ぎはさらに拡大してゆく。 位置が目まぐるしく入れ替わるせいでボールに戻すこともままならない。 (あっれー……?友達同士のはずだったんじゃ……?) 結局、この乱闘騒ぎは駆けつけた職員が連れて来た萌えもんが眠り粉を撒くまで続き… レッド少年ともどもジョーイさんに小言をもらう羽目になった。 …ちなみに立場的な理由からか俺のほうは内容が約ニ割増だった。 小言から開放され、改めて町外れまで出向いてから目を覚ました二人を(少し距離を置いて)対面させる。 先ほど大乱闘しでかした分もあるのか、即効第二ラウンド開始!とはならなかった。まことに喜ばしい。 てくてくと歩み寄る二人。思わず身構える俺とレッド少年だが別段暴れだす気配は無い…まだ。 お互い手が届く距離になって、互いの両手が上がり……そのままがっしと肩を抱き合って跳ねだした。 「ひっさしぶりー!相変わらずかったいわねー」 「そっちこそー、相変わらずいいパンチしてるじゃなーい」 ……へ? 研究所ではこの二人とさらにフシギダネは友達同士だった、ということは聞いていた。 この様子を見る限り、仲がいいのは間違いない。 じゃあさっきの乱闘はいったい……? 「さっきまで殴り合いしてたのに……」 レッド少年も首をかしげている。 その独り言を拾い上げてリザードが返事をする。 「あー、さっきの?あのくらいはいつもやってたよー?」 「うんうん、どっちかが具合悪かったりとかしてないと絶対してたねー」 ……そうか。 ケンカ友達というか、傍から見ると乱闘レベルのコミュニケーションを取るレベルでの仲良しだった、と…… 「……はぁ」 「あはははは……」 「リザード姉さま……」 もうため息しか出ない。リーフィアとラルトスも困った顔で乾いた笑いを漏らしている。 レッド少年のほうも大差ない様子だった。 「そうだ、ヒロキさん。一度バトルして見ませんか?」 しばらく普通の仲良し同士らしい形での親睦を深めた後、レッド少年からこんな提案があった。 目がキラッとしていたあたり、年相応の萌えもんトレーナーというところだろう。 「それは是非…と言いたいところだけど、これから仕事で行かなきゃならない所があってね。 まぁすぐそこといえばすぐそこなんだけど…… とりあえず、その後で頼むよ」 一連の騒動ですっかり忘れていたが、俺はまだまだ勤務時間中でこれから往診なのだ。 「そうですか……お仕事なら仕方ないですよね。 そういえば、その行かなきゃならない所ってどこなんですか?」 「えーと、何て言ったか……」 萌えもんセンター職員、とはつまりは萌えもんを専門に見る医者である。 従って仕事内容の多くが部外秘の情報であり、一般人のレッド少年にいろいろ教えてしまうのはまずいことになる。 ……とはいえ、これから向かう先は誰でも立ち入り可能、別段特殊な場所でも無い。 「そうそう、萌えもん大好きクラブだ」 俺がクチバに着いたのが午前中のこと。 そこから手続きをして、簡単なガイダンスを終え、荷物を所定の部屋に置いたのが大体正午過ぎくらい。 レッド少年との遭遇からリザードとカメールが引き起こした大騒動、それから一休止置いて改めての二人の再会。 それから二人連れ立って取りとめもない話をしながらジョーイさんに頼まれていた場所――――― ―――――萌えもん大好きクラブに向かった。 着いた時点でまだ午後二時前だったはずなのに。 「「………………………」」 現在、時刻は午前一時を過ぎたくらい。 正直言って甘く見ていたとしか言えない。 いや、寧ろ侮っていた、というべきだろうか。 その名前から、萌えもんが大好きな人々の集まりである以上の意味を見出すことは難しいだろう。 だが、その「大好き」の度合いをここまで極めた人々を俺は見たことが無かった。 ……「大好き」だから、で済む段階はとうに通り越していた気もするが…… 「「………………………」」 もはや言葉を発する気力のあるものは誰一人としていない。 何がすごいって、これだけの長時間がほぼたった一人のうちの子(萌えもん)自慢の話のみで消費されたことだろう。 俺もレッド少年もリーフィアたちも、一切飲み食いはおろかお手洗いにも行くことが出来なかった。 だが、それは自慢話を繰り広げていた人物――――萌えもん大好きクラブ会長も同じ条件のはず。 いや、会長は見たところ既にかなりの歳であり、また俺たちが単に聞き続けるだけであったのに対し、 彼は息継ぎすら惜しむかのように語り続けていた。 その上で話し終わった後も疲れたそぶりの欠片もうかがえなかったのだ。 彼だけでない、密かに周りを伺ってみればそこらじゅうで絶えることの無い親馬鹿話のオンパレード。 その場の誰もがろくに食事・休憩をはさんでいる様子もなく同じように喋り続けていた。 ……否、「喋り続けている」、だろう。現にクラブの建物の明かりは未だに明明としている。 「「………………………」」 足取りは重い。ほとんど椅子に座った同じ姿勢のままで約9時間もじっとしてれば疲労困憊するに決まっている。 空腹もかなりつらいところまできているが、腹を満たそうという気にもならない。ただひたすら睡眠を欲するばかり。 生きた死体のような顔つきで戻って来た俺とレッド少年に、ジョーイさんはすまなそうな顔でねぎらいの言葉等一言二言をくれた。 誰が行ってもこうなることが分かっていたんだろうな…… 辛うじて部屋にもどった俺は、食事どころかろくに着替えもせずにそのままベッドに転がり込み、数分しないうちに深い眠りに入った。 意識が飛ぶ間際、ぎりぎりで部屋に出した三人も大差ない有様だった。 後から聞かされた話だが、彼はあれでも、とある大財閥を取りまとめる会長でもあるとのこと。 そのポケットマネーによる萌えもんセンター及び萌えもんリーグへの寄付の額たるや凄まじく、萌えもんセンター運営費の実に1割にも届こうかという額だそうな。 そんな人物がなぜ10時間近くも自慢話に費やせるのか理解に苦しむが、ともかくも彼の機嫌を損なうことはセンター側として切実に避けたい事態である。 ということで、センター職員が週一のペースで往診に向かっているらしい……今回のような調子で。 萌えもんのために働くセンター職員に対しては相当に太っ腹な人物らしく、往診に行った職員はたいていが何かお礼の品…それも高額なものを渡されるらしい。 今回も、長話に付き合ってくれた礼といって、レッド少年にはハナダミラクルサイクルの自転車引換券 (目に飛び込んできた自転車の100万円という値段に我が目を疑った)、 俺には豪華客船サントアンヌ号の乗船チケット (こちらも負けず劣らず高額な代物、そもそも数が限られていて値段以前に現物が無い)を、 それぞれ渡された。 だが、たとえどんな礼をされようとも俺は二度と行きたいとは思えなかった。 「うぅ、ねみぃ……」 いつもどおりの時間に起きられたのは奇跡か、はたまた空腹によるものか。 ろくに疲労も取れては居ないが無理やり体を起こし、簡単に朝食を準備する。 「すぅ……」 「ぐー……」 「くぅ……」 リーフィア達はまだぐっすりだ。彼女達は別に仕事があるわけではないのでこのまま寝かせておいて上げることにする。 三人の分の朝食もこしらえて、自分はさっさと平らげる。 顔を洗いに洗面台に向かい、洗面台に写る自分の顔にくっきりと浮かぶ隈に肩を落としつつ…… 勤務準備完了。さすがに慣れた工程、疲労と寝不足がセットでもしくじりはしない。 ……昨日そのままで寝たのを忘れて着替えを探したり顔を洗うつもりで何故か手を洗ったり、といったミスを省けば。 「疲れ果ててる、なんて休む言い訳にになる筈無いからな…」 そう一人ごちながら受付に顔を出した俺を見てジョーイさんは驚いた様子で、 「あら、今日はあなたはお休みだから寝ていても良かったのに……」 とのたまった。 「……はい?」 「あら、昨晩言わなかったかしら? 例の往診の次の日は特例で有給扱いにしてるのよ。 無理に仕事に回ってミスを多発されるよりはそのほうがずっとマシ、ということになってね」 全く持って記憶に無い。それほどまでに疲れていたわけか。 だがありがたい話ではある。この状態で普段どおりの仕事が出来るかといわれれば、正直に言って自信が無いからだ。 「それではお言葉に甘えまして、一日休ませていただきます。 ……来てすぐ休みなんて、なんだか気が引けますが」 「いいのよ、どんな内容かもほとんど説明なしに送り出したのはこちらなんだから。 明日から、期待してるわよ」 そんなジョーイさんの言葉を背中に受けながら、俺は部屋へといそいそと戻っていった。 部屋に戻っても、三人はまだ夢の中だった。 リーフィアは普通に布団を来ており、リザードは掛け布団を蹴倒して大の字になっていて、ラルトスはベッドの隅のほうで丸くなって寝ていた。 変わらないのは皆寝顔が幸せそうなこと。 三者三様の寝相に自然と顔が綻ぶのを感じながら、自らもゆっくり二度寝せんと布団にもぐりこんだ。 続く あとがき(と言う名の言い訳集) 間を空けすぎた。自分でも流れをすっかり忘れはてる有様でした。 レッドとヒロキの掛け合いがぎこちないのは半分仕様、半分はうまく書けないせい。互いに年齢差がひっかかってる感じか。 レッド少年は礼儀正しくて大人しめだけど芯のしっかりした少年、という性格に一応設定ではなってます。 そう書けてるか、書いていけるかはわかりませんが。 あと彼の手持ちも最終メンバーまで設定はしています。設定だけで生かされるかどうかは分かりません。 今回バトルが一切無い。それ以前に萌えもんたちがろくに喋ってない。 リザードですら二言、リーフィア・ラルトスは一言のみ。後は寝言というか寝息のみ。 レッド少年の萌えもんたちになるとカメール以外は一切発言がない…… マチスに至っては名前すら出なかった。次のジムなのに。 少々リアル事情が立て込んだ状態が長引いてまして、かつての鹿さんVerからちっともバージョンアップしていません。 途中でVer変えていろいろと変更点が会ってもこんがらがるので、資料にするROMはこのままのバージョンで行く予定です。 そして事情が別段好転してるわけでもないので続きを書く時間の確保もかなり困難な気配…… それでも書く気自体はあるんですほんとに。誰もが忘れた頃に細々と書いていくことになりそう。 それ以前に現在の時点で忘れられてるんじゃないかというのは置いといて……w こんな文でも読んでいただけるならうれしい限りです。
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/566.html
「ヒトカゲ、秘密兵器の準備はいいな?」 「はいマスター」 自慢の爪を擦りあげる音でヒトカゲは応える。 目の前にはニビシティジムリーダー、タケシが仁王立ちで二人を見据えていた。 「まさかほのお萌えもんで挑戦してくる奴がいるとはな。 面白い、俺のいわ萌えもんの力を存分に味わっていけ!」 「属性優位に立ってるからってあまく見るなよ。いけ、ヒトカゲ!」 「はい!」 勢いよくバトルステージに飛び出すヒトカゲ。 元来臆病な彼女にとって、いわやみずといったほのお萌えもんの天敵に立ち向かうなど、 考えただけで足がすくんでしまう。 しかし、この時だけは違った。ヒトカゲのマスターが呟いた秘密兵器に自信をもっていた。 ―――これさえあればもう怖がることはない。 ―――わたしを選んでくれたマスターに強いところを見せてやる! その気概は、ヒトカゲにある種の気迫すら持たせた。 それに胸躍らせたのか、タケシがくりだした萌えもんは、紛れもない彼の切り札。 「立ち向かえイワーク!」 「イワークだと!」 計算外だ、とヒトカゲのマスターは舌を鳴らす。 ヒトカゲも一瞬ひるんだ。 自分のしっぽより全然長く、そして大岩の硬質を携えたその髪の毛をたゆたせて、自分を睨んでくる。 旅に出る前なら見るだけで泣き出していたであろう萌えもんだ。 だがヒトカゲは泣かなかった。目尻の涙をこらえて、逆に睨み返してやった。 マスターもその決心を感じ取ったのか。 初手はいきなり、この日のための特訓の結晶。 「ヒトカゲ、メタルクロー!」 驚く間も防御の隙も与えない。 まさしく電光石火、元々すばしっこさならヒトカゲがイワークに負ける道理はない。 アイアンクロー。鉄の硬度へと変質したその爪にかかれば、岩など紙くずと同じ。 いわ萌えもんを文字通り粉砕する、はがねタイプの技こそが、二人の秘密兵器だった。 懐に飛び込む。爪がきちりと音を立てる。まだ敵は反応もしていない。 その無防備な肢体を肩口から、がきん、と切り裂いた。 がきん、と。 「へ?」 「はい?」 粉砕どころの騒ぎではない。 イワークの体には何の変化もない。 無理に変化を挙げるとするなら、灰色の服がメタルクローの軌道に裂かれていることぐらい。 それ以外はなんともない。イワークはピンピンしている。 だからこの反撃は当たり前のこと。 「イワーク、がんせきふうじとじしんで動きを止めろ!」 「それ息の根も止まりますー!」 涙ながらの訴えもなんのそのというか、お構いなくというか。 なんかもー、へたに状況描写するより最後の一匹にこころのめなしでぜったいれいどを決められた時の絶望感を 思っていただいた方が分かりやすいと思いますよ? 「はっはっはっは! 目の付け所は良かったが、ヒトカゲではパワー不足だったな!」 「ヒトカゲー!」 駆け寄るマスターの足音だけを聞きとる。 ああ、こんなザマじゃあもう違う萌えもんで戦うんだろうなぁ。情けないなぁ。 薄れいく意識でそんな泣いてしまいそうなことを思っていると。 「大丈夫か! くそう、次こそは勝とうな! また二人で挑戦しよう!」 今 な ん と お っ し ゃ い ま し た ? ……結局ヒトカゲがイワークを下すのは、リザードに進化して久しくなった頃だったという。 なお、合計挑戦回数とその内容は、本人の名誉のため伏せさせていただく。 「マスターまだかなぁ…」 リザードはハナダシティセンターでそんなことを呟いた。 彼女のマスターは今、この町のジムリーダーへの挑戦手続きに出かけている。 なんでもここのジムリーダーはあまりにも強く、足止めをくってるトレーナーの再挑戦が後を絶たないらしい。 そこに新規挑戦分も重なり、ジムリーダーへの挑戦にいちいち約束をとらなくてはならない事態に陥ってるというのだ。 だがリザードはそんな事情とは別のところで気持ちが沈んでいた。 ハナダジムはみず萌えもんの使い手が集うと聞いたからだ。 件のニビジムはアイアンクローがあるという理由で挑戦したが、今回はそうもいくまい。 炎に水をぶつけるなぞ、無茶だ無謀だと言葉を使うのもおこがましい暴挙だ。 流石に今回はわたしは控えだろう。そして、おそらくはでんきかくさタイプで勝負を挑む。 安全は保障されているが、その引き換えに自分のマスターが違う萌えもんを選ぶ。 それが今のリザードの立ち位置だった。それが、とても嫌で嫌でたまらない。 だが救いがないわけでもない。 マスターとの二人旅が終わるのは辛いが代わりに仲間を交えた賑やかな日々が待っている。 何よりニビシティの悪夢を繰り返すことはなくなる。これが特に大きい。 今も残るがんせきふうじの傷跡とかポニーテール恐怖症とかに加えて、新しいトラウマに悩まされることはない。 そうでなくては泣き虫な自分は人目のあるセンターで咽び泣いてることだろう。 人目があるといえば。 (なんだか見られている気がする……) トレーナーのいない萌えもんがセンターにいるのが結構な変事であることを差し引いても、見られている。 そして、何かが聞こえる。 音源は自分を見ている人達からだ。 「例のリザードってあの娘かしら? 可哀相にねぇ…」 「まさかほのお萌えもんでカスミに挑戦する奴がいるとはなぁ」 「カスミさんカンカンだったぞ。いい度胸じゃない、スターミーでハナダの藻屑にしてやるわ! って」 「うへえ。あのスターミーに皆やられてるんだろ?」 「カスミは俺の嫁」 「くさやでんきの萌えもんでも勝てないってのに、よほど自信あるのかねぇ」 「でもあのリザードじゃないのかな。さっきからオドオドビクビクしてるよ」 ……うそだ。絶対に他人の空似だ。 そうそう、リザードなんてそんなに珍しくも、いや珍しいけど、何もわたし一人だけじゃないし。 必死で噂に抵抗する彼女に、しかし民衆は残酷である。 「しかし変なトレーナーだったらしいぜ。カスミの返り討ち宣言に…えっとなんて返したんだっけな」 「そうそう。なんでも『リザードはリザードンの一歩手前なんだ。そのリザードが負けるもんか!』とか」 うそ! どこか自分のマスターっぽい台詞だけどうそ! ぶんぶんと頭を振るリザードの肩に、ぽん、とかかる手。 この感触には覚えがある。帰ってきたんだ。 そうだ、この人に訊けば全部うそだ根もない噂だってことがはっきりする。 期待の眼差しで振り向く。 おかえりなさい、と言う前に、声をかけられる。 当然のように。 「ただいま。突然で悪いけど、早速ジム行くぞ。挑戦すぐに受けてくれるってさ」 リザードがショックから立ち直るまで三十分。ハナダジムを攻略するのには二週間かかったという。 そして彼女が星型恐怖症になったのは言うまでもない。 「リザード、かえんほうしゃだ!」 「はい!」 ポケモンタワーに供養の送り火ではない炎が灯る。 敵はタマタマ。レベル差は歴然。焼き払えないわけがない。 リザードは久々に優位な相手と戦えた幸せを噛み締めた。 「どうだ! お前の萌えもんは残すところ後一匹だぞ!」 自慢気に自身のライバルを指差すリザードのマスター。 一人だけを手持ちとするそのやり方は、リザードのレベルを異常なまでに引き上げる結果となった。 最早苦手な属性相手でなければ負けはしない、という次元までリザードは行き着いたのだ。 「へー、やるじゃん。けどオレにはまだこいつがいるぜ!」 余裕があるのか、敵トレーナーは自信満々にボールを開ける。 中から出てきた萌えもんは、リザードと同じ研究所出身のカメールだ。 「よう、随分強くなったじゃねえかリザード」 「アンタよりはね」 普段は臆病なリザードも、昔の馴染み相手には気軽に軽口をたたけた。 本来ならシートを敷いておちゃも淹れて故郷の話に花を咲かせたいところだが、そうもいかない。 そして、戦闘としての状況は逆転した。 カメールがみず萌えもんなのもマイナスだが、リザードはこの戦闘で四人の萌えもんを相手している。 消耗が激しいのは隠しようがない事実だ。息は上がり、生命力の証であるしっぽの炎も危なげだ。 最初からカメールを出さなかったのもこれが狙いだったのだろう。まともに戦ってリザードに勝ち目はない。 だがトレーナー同士の戦闘に逃げはない。ひとたび始まれば結果を見るまで終わりはないのだ。 リザードが不安そうに自分のマスターを見上げる。 「マスター、指示をください」 敵はまだ動いていない。 何かを仕掛けるなら今だけだ、とリザードは考えている。同じことを主も考えていた。 迷いは負けだ。リザードの要求から数秒を待たずに、新たな指示を思いつき、送る。 「新技でカメールを足止めしろ!」 「えぇ!?」 耳を疑う。新技ってこの前わざマシンで覚えたアレ……!? 嫌な汗が体中から噴き出る。だが、自分のトレーナーの命令は萌えもんにとって絶対だ。 特にリザードにとって、指示に逆らってマスターから嫌われる、など無意識に避けている程の一大事。 ごくりと喉が鳴る。どうか、どうか。 少し前かがみになって、胸元に余裕を作る。竹馬の友のカメールよ。 襟を掴んで、過剰なまでにあおぐ。お願いだから。 頬なんかも染めちゃったりして。ギャグとして受け取ってください。 「ふ、ふぅ……暑いわねぇ。あ、どこ見てるのよえっち!」 リザードの メロメロ! 「………」 「………」 「………」 「………」 寒い。怨霊とか呪いとかじゃなくて、生きてる者の所為で寒い。 雌としての尊厳を失った気もするが、それ以上に寒い。 もちろん空気的な意味で。 「……よしリザード! 気にせずきりさく!」 そして、せめて一番動揺してほしかった人の発言が、彼女の色々と大切なものを引きちぎった。 「マスター、何でわたし初対面の雄を誘惑しなきゃいけないんですかぁ? しかも天敵のカメールをぉ」 力という力を失ったようにへなへなと座り込んだリザードは、 「びいいいいいいいい! マズダァアァァァァァァァアア!!!!」 ほのお萌えもんとは思えない量の涙と共に、わんわんと泣き出してしまった。 カメールとの過去もぶっ飛んでしまう動揺っぷりである。彼女のマスターが慌ててなだめにかかる。 そして結果を見ることなく戦闘は終わった。 最初で最後の一人とそのトレーナーがこれでは戦闘自体が成り立たない。 立ち去るカメールの同情の眼差しと鼻血にも気づかず、リザードはポケモンタワーで泣き続けた。 その姿は傍から見れば 「友達の萌えもんが死んじゃって飼い主に慰めてもらってるペット」 にしか見えなかったという。 「ひっく、うっく…えぐぅぅええ」 あたしはミニリュウ。ごしゅじんさまのもえもんだよ。 いま、ともだちのリザードンがないているの。 それはいつものことだけど、いつものことじゃなくて、いまはあたしたちふたりだけしかいないんだ。 ごしゅじんさまは 「はい、確かにやりすぎたとは思っています。 でもジムの壁丸焼きにしたり部屋を水浸しにするのは萌えもんバトルではよくあることだと思うのですが。 え? とにかく被害届が出てるんだからご同行お願いします? あとカメールの言い訳強引だよ、一作目と矛盾してんじゃないよこのタコ? な、何の話ですか? あ、ちょっと何掴んで、どこ連れて行く気ですか! いやなみのりのために破壊した水道管の事もって、そういう技じゃないでしょなみのりはアッー!」 ってつれてかれた。とうぶんかえってこないきがする。 ぼーるもいっしょにもってかれちゃったから、あたしたちはせんたーでおるすばん。 なみのりごっこも、リザードンがすごくいやがるから、ひまだった。 そういえば『かんにんぶくろ』ってどこにあるのかなってかんがえてもわからないし。 リザードンもひまそうだったから、ずっとしりたかったことをきいてみた。 「ごしゅじんさまとリザードンってどこいったの? どんなことしたの?」 リザードンが「えっとね」とはなしてくれた。 あたしがつかまるずっとまえから、ふたりきりでいろいろしたってきいてたから。 どんなたのしいところいったのかなぁ、とおもってきいていたら。 「うぅぅう……マスターのばかばかばかばかばか」 きゅうにないちゃったの。 あたしはなんでないちゃったかわからないから、こまっちゃった。 でもすごくないてる。ときどき「そういえばあの時なんて!」っていってる。 「無理ですよぉ……ひっく、ニドクインの、うっ、じし、じしんなんてぇ、ひぐっ、ごめんなさいぃ」 とにかくごしゅじんさまがかえってくるまで、あたしはリザードンに“よしよし”してあげようとおもう。 あーあ、はやくごしゅじんさまかえってこないかなぁ。 主人公が外道なんじゃなくて泣き虫ヒトカゲ・リザード・リザードンがめちゃくちゃイジメ甲斐あr(ry
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/453.html
2日目 - ピカチュウ - 今日は朝みんなで相談して、一日休息と決めた。俺は朝からロコンの顔をまともに見れなかったが、 あちらはもうずっとキラキラした眼で俺を見ている。…なんで? 「とにかくマスター。まずは君だ。私達より相当疲れているようだからな、今日は物資の補充や情報収集も禁止。 その分は私たちが働く。用事があったら言ってくれればいいから、安心して休んでくれていい」 「ありがとうフーディン。…なるべく用事は君に頼むようにするよ」 「ああ、その方がいいかもしれないね。シャワーズ・ロコンは今日の食材と薬類の買い出しをお願い。 私は町の方で情報を集めておく。フシギソウとピカチュウはマスターのそばで監視。無茶をさせないように」 「分かりました」「はい…」 「はいはーい!」「任せて!」 フーディンが俺の代わりに指示を出してくれる。頼もしいし俺を心配してくれているのは嬉しいんだけど、 こうも有能だとトレーナーとしては若干複雑でもある。 「そんな心配しなくても、私のマスターは君なんだよ」 「読心はあんまりしないでほしいな、フーディン」 「していない。君の顔に書いてあるだけさ。」 …俺、ヤマブキでどうやってコイツに勝ったんだろ。 「マスター、補充する薬はこれくらいでよろしいですか?」 「んー、なんでもなおしを3つくらい多めに買っておいてくれ。キョウは毒使いだと聞いているからな…」 「分かりました。それでは行ってきますね」 「いってきます、ますたー」 「ああ、行ってらっしゃい。気をつけてな」(結局ロコンはいつも通りか…まぁ、考えてみたら当然なのかな) 「では私も行ってくる。分かっていると思うけど、無茶をしたら明日はかなしばりでベッドにしばりつけるからね」 「…気をつけます」 「行ってらっしゃい、フーディン!」「フーちゃん、いってらっしゃいー!」 さて、どうしようかな。休むとはいってもずっと寝てるのもどうかと思うし。 俺が思案に暮れていると、ピカチュウがいいつりざおを持ってきて俺に手渡した。 「マスター、海行こう海!ソウちゃんにお弁当作ってもらって、3人で!」 「釣りか…そうだな、それならいいかもな。フシギソウ、頼めるか?」 「うん、任せて!御主人さまとピカチュウの好きなものいっぱい作るね!」 フシギソウは料理がうまい。というか、コイツはもともと凄く器用なので、家事系統は俺が教えるとどんどん覚えて行ってくれるのだ。 俺たちの食事は、基本的に彼女とシャワーズに任せっきり…と言う事になる。 「じゃあボクはお弁当できたら海に行くから、ピカチュウと先に行ってて!」 「分かった。ありがとな、フシギソウ」 念のためにボールとバケツを持って、水筒をピカチュウに手渡す。 俺達はセンターの前の段差を降りて19番水道へと向かった。 * * * 「…それで、よくもここまで釣れたものだね」 「ますたー、すごい、です」 「いやー…隣の釣り人さんが、『君も釣り好きかね!これをあげよう!』 って『すごいつりざお』を気前よくくれちゃったんだよね…で、さっそく使ってみたら…」 普通に食べられそうな魚があれよあれよと釣れていく。しかもすべて大物。 さらには、シェルダーやヒトデマンなどの水萌えもんまで飛び出してきて―― 「しかし、ギャラドスまで出てくるとは思わなかったな…休養のつもりが、とんでもない事になっちまった。 ピカチュウとフシギソウがいなかったらどうなっていたか」 そう、挙句の果てにはギャラドスまで飛び出してきたのだ。水中から飛び出すやいなや俺に襲いかかってきたが、 近くで海と戯れていたピカチュウの10万ボルトと、ちょうどお弁当を持ってきてくれたフシギソウの葉っぱカッターによって一瞬で海に叩き返された。 「マスター、捕まえたシェルダーとヒトデマンはどうしたのですか?」 「データはとったからボックスに送っておいた。マサキがまた大喜びするんじゃないかな。」 今のところ、水タイプはシャワーズで充分事足りている。まぁ、今後「なみのり」を入手して海を渡る場合には、 さすがにヤマブキで受け取ったラプラスあたりの協力が必要だとは思うのだけど。 「あー…半日も海にいると全身潮風でベトベトだな。早く風呂に入りてぇ…」 う、そんなこと考えてたらまた昨日のこと思い出してきたぞ…イカンイカン。 俺がくだらない事で悶えていると、脱衣場からフシギソウが出てきた。頭のつぼみをタオルで拭いている。 「御主人さま、おまたせ!お風呂あいたよー?」 「ああ、わかった、じゃあ入ろうかな」 「ますたー」 「ロコン!?どど、どうした?」 「シャワーズおねえちゃんといっしょに、ばいてんにいってきたいです。いいですか…?」 「あ、ああ…行ってらっしゃい。センター内だけど、気をつけろよ?最近変態がそこら中にいる世の中だからな」 …俺は絶対そういう趣味ないからな。いや本当に。 可愛さのあまり自分の萌えもんに襲いかかったりする人もいるらしいが…いや、俺は違う、違うんだ! 迷いを振り払うように、脱衣場に入って服を脱ぐ。とりあえずシャワーを浴びて潮を落とし、 体と頭を念入りに洗う。お湯で泡を流して、湯船につかろうとした瞬間。 がちゃり、と。脱衣場の扉が開く音が聞こえた。 「マスター、入るよー?」 「ピカチュウか!?」 反応して振り向くのと、風呂場のドアが開くのは同時。 カーテンというには薄すぎる湯気の幕の向こうに、ピカチュウの幼い裸身が――ってちょっと待て。 「ちょ、タオルは!?」 「ふぇ?」 えーと、とりあえず慌ててドアを閉めた。今、ピカチュウは何も着ていなくて、それはつまりもう上から下まで一糸まとわぬ全裸だったわけで―― でも、ロコンより小さいっていうか、もうあれは完全にまない…じゃなくて!! もう拒絶とかそれ以前の問題です。本当にありがとうございました。 「せめてバスタオルを巻きなさい!女の子がはしたない!」 「はーい」 …駄目だ、もうこのタイミングで追い返すとかできねぇ。しかも何の恥じらいもなく入ってこられると、逆にこっちがおかしいとさえ思えてくる。 いかん、落ち着け俺、KOOLになれ…って昨日とほとんど展開一緒じゃねーか! 「マスター、巻き終わったよ」 「…入ってよろしい」 「やったー!」 また勢いよくドアを開けて、ピカチュウが飛び込んでくる。 転ばれて怪我でもされてはかなわない。とりあえず両手でその小さな体を引きよせ、座らせる。 「てか、お前も潮でベタベタだな。シャワーあてるぞ、目つぶって」 「うん」 適温に調節したお湯を、頭の上から流していく。こうなれば仕方ない。 頭と体は自分で洗わせるとして、昨日と同じように先にあがることに―― 「マスター」 「なんだ?」 「頭洗って!」 「…ああ」 …断れなかった。 * * * 「…目ぇつぶれよー」 「う、うん」 ピカチュウの髪はロコンほど長くはない…んだけど、気になる点が一つ。 (…これ、どうやって立ってんだ?) 頭頂部から飛び出している一筋の金髪。まぁ、いわゆる「アホ毛」って奴だ。(実際こいつは結構アホ、というかうっかり屋だと思う) 先ほどのシャワーでも、今のシャンプーでも倒れる事はなく、ずっと上へと伸びている。 うーむ、と思案に浸りながら、頭のマッサージを続けていると。 「やんっ!」 「ッ!?」 …い、今何か妙に艶めかしい声をピカチュウが発した気がしたんだが… 俺は今何をした?両手の先を見てみると、そこにあったものに気がついた。 「…あ、耳は洗ったらまずかったか?」 そう、ピカチュウの特徴の一つともいえる、大きな耳だ。野生の萌えもんを探したりする際にも大いに活躍する感覚器官は、 どうやら俺の予想以上に敏感な部分らしい。それをタオルで洗うっていうのはどうなんだろうな。 「ん、平気…耳も洗ってほしいな?」 「うぐぅっ!?」 ちょっと甘えた声でそんなこと言わないでくれ、さっきから俺はもう限界なんだ。 が、途中で投げ出すのもよくないと、俺は慎重に、丁寧にピカチュウのとがった耳を洗い始めた。 「ん…あ…ぅん…はぅ…」 「えーと、痛かったら言ってくれよ?」 「にゅ…うん、大丈夫…うぁっ…は」 …なんつーか、ある意味これは昨日よりヤバイ。タオルで耳を擦るたびにあげるピカチュウの小さな声が、 休む間もなく俺の理性を削り続けている。…駄目だ、落ち着け、K(ry 俺が耐えながらも何とか耳をすべて洗い終えた。…実際は1分かかっていないのに、すごく長い時間に感じられたのは何でだろう。 「おし、流すぞ。目ぇつぶって」 「ん…」 お湯で頭の泡を丁寧に落とす。とりあえずはこれで一息つける―― 「マスター、次は体洗って!」 「あ、悪いピカチュウ。俺ちょっと用事思い出したからもうあがらないと! 体はちゃんと自分で洗うんだぞ。あとお湯にもちゃんとつかれよ? 50まで数えてからあがってくるようにな?ジュース開けといてやるから、きちんと入ってこいよ!?」 「え、あ、うん」 「じゃあお先に!」 何とか離脱できた…正直もう駄目かと思ったぜ。 とりあえずタオルで全身を拭いて、服を着て部屋へ戻る。何やらフーディンがソファでテレビを見ていた。 「ん、どうしたんだいマスター。何やら妙に慌てているみたいだけれど」 「フーディン…どうしてピカチュウを止めてくれなかったんだ」 怒りと言うよりもう疲れをこめて彼女に問いかけると、フーディンは珍しく驚いた表情をした。 「私はてっきりシャワーズとロコンと一緒に売店へ向かったのだと思っていたのだけどね。違ったの?」 「今風呂場に乱入された」 「そうか」 「ノーリアクョンかよ!」 思わず叫ぶと、フーディンは意地の悪い笑顔を俺に向けてきやがった。 「役得、という奴じゃないか。入ってきたのが向こうなら、何かされても文句は言えないはずだと思うが?」 「俺はピカチュウの事をそう言う眼で見た事はないし、見たいとも思ってない」 「ふぅん」 何か少し考えているフーディンの横に座り込む。ソファーが少し沈んだ。 『ファーイ!』『マコトCCO!!』『ガトチュエロスタイム!』『フタエノキワミ,アッー!!』『強姦パウダー!!』 (…なんだ、これ) 明らかに外国語としか思えないアニメを、見るでもなく何となく眺めてみる。 と、真横から冷えた水の入ったコップが突き出てきた。 「まぁ、風呂上がりには水分だ。とりあえず落ち着きたまえマスター」 「ありがとう」 一気に飲み干す。と、このコップはどこから来たのだろう。 さっきまでテーブルの上、フーディンの目の前に置いてあった気がするんだけど… 「フーディン、これ」 「ああ、さっきまで私が飲んでいた。人間でいう間接キスと言う奴だね」 「ぶっは!?」 …やっぱり、コイツには勝てる気がしない。いろんな意味で。 余談だが、この日の夜もあまり眠れなかった。というのも、ロコンとピカチュウがひっきりなしに瞼の裏に浮かんでくるからだ。 …おまけに眠ったら眠ったで、余計嫌な夢を見てしまった。…俺、大丈夫なのだろうか。 3日目 - フシギソウ - 朝起きて、まず思う。 (今日こそは湯船につかりたい。ホントに) 昨日も一昨日も、体は洗えたが浴槽にはまったく入れていない。 なんとかして今日こそはきちんと風呂に入りたいものだ。 「おはようマスター。今日はどうする?」 「…そうだな。俺達はサイクリングロードを下ってきた訳だし、反対側の道路へ行ってみよう。 トレーナーも多いようだし、ジムに挑む前にやっぱり修業は必要だろ」 「はい」 「あたし、ワクワクしてきたよ!」 「御主人さま、わたしを使ってくれるよね?」 「きんちょうします…」 「ああ、そうそう。昨日報告した情報以外に、もう一つ報告。 明日は、セキチクサファリパーク開園10周年だそうだ。それで、今日の夜は前夜祭として花火の打ち上げ、 パーク周辺で出店の開店もあるらしい。夕食の後に、見に行ってみるのもいいんじゃあないかと思うね」 その言葉を聞いて、皆の眼の色が変わった…ように見えた気がする。 「おまつり、ですか?」 「それホント、フーちゃん!?」 「やったぁ、花火花火!」 「みんな、落ち着いて…まだ行くと決まったわけではないんですから」 「シャワーズ、君も顔が緩んでいるぞ?」 「う…」 ロコン・ピカチュウ・フシギダネ・シャワーズが期待の視線をこちら側に送ってくる。 常識派のシャワーズまでこんな反応とは。 …まぁ、どうせ日が暮れてはバトルもしづらい。彼女たちの事をフーディンに任せれば、俺ひとりで風呂にも入れるだろう。 「…分かった。どうせ予定があるのは昼間だけだ。夜はみんなでお祭りに行こう」 「やったぁー!」 「マスター大好きっ!」 「ありがとう、ますたー」 「ちょ、ちょっと皆…」 「まぁまぁ、元気でいいじゃないか。所でマスター、お小遣いはいくらかな?」 こいつらのこう言う笑顔を見ていると、俺も元気になれる気がする。 よし、昨日までの事は忘れよう。今日はみんなと思いっきり楽しもう。 * * * いつもいつも個性的でまとめるのに苦労する5人だが、萌えもんバトルでは頼りになることこの上ない。 その体躯からは想像もつかない苛烈な炎攻撃を放つロコン。 小柄さを生かしたスピードと電撃で敵を翻弄するピカチュウ。 ヤドリギのタネやねむりごなという搦め手と、葉っぱカッターの破壊力を併用するフシギソウ。 リフレクターや自己再生、テレポートにサイコキネシスを駆使して攻防で安定した戦いを見せるフーディン。 万能的な能力と、強力な水の技で仲間たちを援護するシャワーズ。 単体での実力もさることながら、コンビネーションに置いて彼女たちに勝るものは中々いないだろう。 この分だと、ジムリーダー相手でも有利に戦いを進められそうだ。 キョウ戦で最も重要なのは、まず毒タイプに強いフーディン、次いで耐久力のあるシャワーズ。 彼女たちのコンディションも見る限りは問題ない。後は、このまま突き詰めていくだけ。 「マスター、あたし勝ったよ!ほめてほめて!」 「ますたー、わたしもがんばりました…」 「ああ、2人ともよくやった。この調子なら、そのうち石も使えそうだな」 ロコンとピカチュウの頭を順番になでてやる。…昨日のことも、一昨日のことも忘れなくては。 「さて…そろそろ引き返さないとまずいな。みんな、セキチクに戻るぞ」 「よーし!みんなでセンターまで競争っ!」 「ソウちゃんズルイっ!待てー!」 「ま、まってください~」 「こら、みんな!勝手に行かないで!待ちなさいー!」 「やれやれ、困ったものだね」 フシギソウが叫ぶやいなや走り出し、釣られてピカチュウも駆け出す。 ロコンがその後ろを慌てて追い、シャワーズもそれを止めるために走り出す。フーディンは念力で浮き上がってふよふよと後ろから追いかける。 …元気なやつらだ。俺も折りたたみ自転車に飛び乗って、みんなを追うためにペダルを踏み込んだ。 * * * 「フーちゃん、あたしの帯知らなーい?」 「さっきそこに置いたろう。巻いてやるからこっちに来なさい」 「フーディンおねえちゃん、わたしのかみどめしりませんか…?」 「…ロコン、君の髪を今留めているのは何だと思う?」 「…おまえら、それ何所から借りてきたんだよ」 「「「センターで貸してもらったの(です・のだよ)」」」 それぞれのタイプを連想させる色の浴衣を着た萌えもん達に聞いてみると、そんな答えが返ってきた。 ジョーイさんのあの深い微笑みがまぶたに浮かぶ。あの人ホントに何者なんだろうか。 「ほら、マスターの分もあるんだよー?」 と、手渡されたのは黒地に白で模様が書き込まれた、涼しげな浴衣だった。 …グッジョブ、ジョーイさん。 「マスター…」 「ん、どうしたシャワーズ…って」 振り向いた先には、普段まっすぐ伸ばしている髪をアップで留め、青地の浴衣を完璧に着こなしたシャワーズの姿だった。 恥じらいの表情で見上げてくるその姿にはかなりグッと来るものがある。…本当にグッジョブ、ジョーイさん。 「あの、マスター…私、変じゃないですか?」 「全然そんなことないさ。綺麗だよ、シャワーズ」 また真っ赤に染まった顔を隠してふるふるしているのが可愛い。 さて…着替える前にできれば風呂に入っておきたいのだが―― 「フーディン、みんなの面倒頼めるか?俺、着替える前に汗流したいんだ。 終わったらすぐ追いかけるから、先に行っててくれ」 「…マスター」 「フーディン?」 「お小遣い500円追加」 「ぐっ!?」 コイツ、こういう時にだけ報酬を要求してくるんだよな…。 まぁ、今日のバトルで賞金は結構な量になってるから、みんなのお小遣い差し引いてもプラスだけど。 「わかった、頼む」 「ふふ、まいどあり。それとマスター」 「ん?」 「もう私以外みんな飛びだして行ってしまったのだが」 「いつの間に!?」 確かに、この部屋にはフーディンと俺の姿しかない。 「まぁ、皆は私が責任をもって引き受けよう。マスターは汗を流してからゆっくりと来てくれたまえ」 「わかった。何かあったら念でも送ってくれればいいからな。頼んだぞ」 そうして、フーディンも出て行った。 さて、今日こそはちゃんと風呂に入ろう。 もう見慣れてきた脱衣場で服を脱ぎ、タオルを巻いてドアを開けて―― 「んにゃー…んにー…」 「………」 がらがらがら、ぴしゃん。 落ち着け、落ち着くんだ俺!そうだ、素数、素数を数えて落ち着け… 「って、落ち着けるかーっ!!」 「ひゃぁぁっ!?」 湯船に浸かって眠っていたフシギソウが素っ頓狂な悲鳴をあげた。 俺も咄嗟に飛びのいて、風呂場のドアをとりあえず閉める。 「ごごごごごごっご、御主人!?」 「お前何でここにいるんだよ!さっきフーディンがみんな出て行ったって――」 そうだ。そういえば、さっきから思い返してみれば、フシギソウはずっと部屋にいなかった。 風呂に入ってそのまま寝ていたから、誰もその存在に気付かなかった、と言うわけか。 「御主人さま…」 「…何だ?」 「あの、さ?せっかくだから、一緒に入らない?」 ドア一枚隔てて聞こえるフシギソウの声。 …やっぱりなのか。結局どうやってもこの展開になってしまうのかぁぁっ!? 「ロコンやピカチュウと一緒に入っておいて、ボクとだけ入らないって言うのは…無いよねぇ?」 「って、お前なんでそれをっ!?」 「あ、やっぱり入ったんだ?怪しいなーとは思ってたんだけど」 こ、こいつ…カマかけやがったのか!いつの間にそんな高等話術を身につけやがった!? 「と言うわけで、一緒に入ってくれるよね?」 「え、あの、ちょっと、フシギソウ」 「答えは聞いてないっ!!」 「ちょ、それなんていうリュウt…って、つるのムチで引っ張るなよ、おい!?」 ドアをこじ開けた蔓が、そのまま俺の両手首をつかんで縛り、一気に風呂場へと引き込む。 俺が風呂場へと入ったと同時に、やどりぎのタネがドアへ放たれて一気に展開、逃げ場をなくす。 「フシギソウ、お前っ!」 「こうでもしないと、マスター逃げちゃうでしょう?」 「…わかったよ、逃げないからせめて両手のこれほどいてくれ。頭も洗えないだろ」 もう観念しよう。幸いにもフシギソウはちゃんとタオルを巻いてくれている。 ただ、やっぱり前の2人より成長しているせいだろうか、タオルがきつそうだ。 ひょっとして、普段気付かなかったけどこいつってかなり…いや待て俺。 「大丈夫だよ、解かなくても。頭ならボクが洗ってあげる!」 「頭はともかく体は自分で洗う。頼むから解いてくれよ」 「むー」 「フシギソウ」 「…わかった」 * * * 何とか、体と頭は自分で洗う事が出来た。一応フシギソウに背中を向けて。 が、体の泡を流し終えたと思ったら蔓が背中をつつく。 振り向いてみれば、フシギソウは湯船の片隅に寄っていた。反対側に俺に入れと言いたいらしい。 「…仕方ないな」 浴槽はひとりでは結構広いのだが、二人だと少し狭い。もちろん、その分体と体がふれあったりしてる訳だ。 何というか…三日連続でここまで理性が危険な状況に立たされているって、誰かの嫌がらせなのだろうか。 「ねぇ、御主人さま。ボク達さ、一緒に旅をしてもうすぐ1ヶ月経つんだよね」 「そうだな。…思い出してみれば、すげえ短かった気がするよな」 「オーキド博士の研究所で会ったんだよね、最初は」 「二人でトキワの森を越えて。ピカチュウに会ったのもあそこか」 「タケシと戦って。イワーク、いい子だったね」 「おつきみ山を越えて。あそこの月はきれいだった」 「ハナダでマサキさんと会ったよね。ロコンを連れて行ってくれってお願いされて」 「カスミと戦って。スターミーは強かったな」 「ホントだね。ボク達初めて負けちゃったもんね」 「で、クチバでサントアンヌ号見学したり、ディグダの穴を探検したりな」 「ボク達、海ってあれが初めてだったんだよ」 「そうなのか?マチスは…ゴミ箱しか印象にねぇな」 「イワヤマトンネルを通って、バタフリーとお別れしたのもあそこだったよね」 「まぁ、あいつも元気でやってんだろ。どっかでまた会えるさ」 「タマムシについてからは忙しかったよね」 「ロケット団につかまってたイーブイを助け出して、アジトをつぶして、エリカと戦い、 シオンでフジ老人を救出。そのままヤマブキに突入して、格闘道場と協力してシルフカンパニーでサカキを倒し、 そのまま勢いでナツメと戦って勝っちまったんだもんな。フーディン…あの時はユンゲラーだけど、あいつもあそこにいたんだっけ」 二人で並んで思い出を語り合う。こいつとは旅を始めたときからの付き合いだもんな。 会話の途切れ目。フシギソウが何気なくつぶやいた。 「ねぇ御主人さま」 「どうした、フシギソウ」 「この旅の終わりってあるのかな?今の旅は楽しいけど、終わった時どうなるのかな…って」 「…そうだな。一応目標はポケモンリーグ制覇って事になってるから、もしそれが終われば一つの区切りって事にはなるかな」 「うん、そうだよね…」 俺も時々そのことを考える。苦労もするけれど、今の旅路はとても楽しいものだ。 もしこの旅が終われば、俺達はどうなるのだろうか。…答えとは言い難いかもしれないが、俺は一つだけ分かったことがあった。 「けどさ、フシギソウ。目標とか区切りってさ、何も一つじゃないと駄目って事はないだろ」 「え?」 「たとえば、折角だからカントーだけじゃなくてジョウトやホウエン、シンオウの方のリーグも全部狙ってみる、とか!」 「えぇ!?」 「なんならもう世界中回ってみるのも面白いかもな。 そうやって、いろいろ目標を作っていく限り、俺達の旅は終わらないだろ?」 そうだ。終わらせることはいつだってできる。けれど、終わりは存在しない。 きっとそれが、俺達の旅だと思う。 「じゃあ、御主人さま」 「うん?」 「ずっと旅を続けるとして、その時はボク達をまた一緒に連れて行ってくれる?」 「バカな事聞くんじゃねぇよ」 「ば、馬鹿じゃないよ!」 「当たり前だろ。みんながついて行きたいっていうなら、俺はどこだって一緒に連れていってやるさ」 「御主人さま…やっぱり大好きっ!」 「うわっ、やめろ、溺れるから!ホント溺れるって、死ぬ、死ぬからやめろぉぉっ!!」 あと胸を押しつけるな!俺の理性も同時に死んじまうから! * * * フシギソウより先に上がって、服を着こむ。 理性は何とか、本当にぎりぎりのところでもってくれた。何気に凄いよな、俺。 「ふいー」 やがて、フシギソウも出てきた。髪色とあった、濃緑の浴衣を着ている…のだけれど。 「フ、フシギソウ!お前、なんて格好してんだよ!?」 「だって暑いんだもん…帯結べないし…」 その浴衣の前面が大きくはだけている。しかもその下には下着以外何も着ていないようで、 もういろいろな所が見えていた。流石にこれは直視できない。 「あ゛ーづーいー」 フシギソウ本人はそんなことはお構いなしにふらふらと俺の目の前を通り過ぎて、ベッドへばったりと倒れこむ。 もう本当に浴衣が意味をなしていない。むしろまとわりついている分妖しさと言うか、艶めかしさを強くしている気がする。 「わかったわかった、これ飲んでちゃんと服を着ろ」 「んー」 と、冷蔵庫にあったミックスオレを取り出して手渡す。 「んく、んく、んく…」 ミックスオレを飲み干すその白い喉の動きにさえ、今の俺は不自然に緊張してしまう。 ここ3日間で限界まで削られた理性が、さらにそぎ落とされようとしているのだ。 「あ、こぼしちゃった」 「…っ!!」 ぼたぼたと胸元へ落ちる乳白色の液体。それをフシギソウの指が掬いあげ、 ちゅ、と吸いついた瞬間。 今まで必死で保ってきた理性が、音を立てて崩れるのを俺は理解した。 「フシギソウッ…!」 「え、あ、きゃぁっ!?」 * * * 数刻後、こちらは前夜祭に参加しているシャワーズ達。 「…フシギソウか?今までどこにいた…って、何だと!?」 何やら念話を行っていたフーディンの顔色が変わった。 周囲にいたピカチュウ・ロコン・シャワーズもその声に振り返り、彼女の周りに集まる。 「わかった。とりあえず君はそこを動くな。すぐに戻る、待っていろ。 …くそ、こんな風に転ぶとは…いや、それはこのさいどうでもいいか」 フーディンは念話を切って、悪態をつく。その顔には、今まで誰も見たことないような焦燥が浮かんでいた。 「フーちゃん、どうしたの?」 「みんな、急いでセンターに戻るぞ。詳しい説明は走りながらする。とにかく一刻も早く戻るんだ!」 「いったい何が――」 シャワーズの問いに、念力で浮かび上がって移動を始めたフーディンが答える。 「ますたーが!」 「センターから飛び出して!?」 「行方不明になった!?」 「そう言う事だ。急ぐぞ!」 後編へ続く
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/241.html
灯火山の頂上、温泉の地熱により熱風が充満する中。 渦巻く炎の嵐の中に主人公達はいた。 「我、眠りを妨げる者、許さじ」 嵐の中心には1匹の萌えもん。赤き炎を見に包みしその華麗な姿の彼女は彼らに対し、怒りを見せていた。 「……っ!」 「マスター……! 怖いっ!」 「ど、どうするの御主人様……!」 主人の足にしがみつくピッピとプリン。 「いいか、一箇所にいると一気にやられる可能性がある! まずはバラバラになれ!!」 『了解!』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― コトの始まりはピッピの持ちこんだ情報だった。 「ねぇマスター! 聞いて聞いて!!」 「ん?どうしたピッピ?」 「あのね、月の石があるって噂を聞いたの!!」 「月の石? ほぉ……で、何処にあるって?」 「えっと、ともしびやまのふもとにあるって!」 「灯火山……1の島か。なるほど……行ってみるか。」 こうして、一行は1の島へとやってきたわけだ。 灯火山から吹いてくる暖かい風がこの島を包み、年中温暖な気候である1の島。灯火温泉が有名な他、多くの萌えもんの生息場所でもある。 「いい所だなぁ。」 「日向ぼっこするには最適な所……ね。」 「にゅ、空気のいい場所なんだな~」 「なんだなぁ~」 「こういう所に来ると、走り回っちゃいたくなるなぁ!」 「むにゅう、気持ちよくて何だか眠たくなってきたの……」 「ねぇねぇ! 早く月の石探しに行こうよ!!」 「まぁまぁ、またとない機会なんだから温泉にでも入ってゆっくりしていかない?♪」 港から出て辺りの景色を見渡す主人。 腕を上に伸ばし伸びをするサンドパン。 空を見上げて無心になるヤドラン。 そわそわし放しのガーディ。 うとうとと頭を垂れそうなプリン。 早く見つけたいがために主人のズボンを引っ張るピッピ。 そしてマイペースなスピアー。 「そうだな、ここ最近連戦だったし、たまには観光気分で探すのもいいな。」 「え~! 早くしないとなくなっちゃうかもっ!!」 「……わかったわかった。それじゃあまず、月の石を手に入れてから観光するか。」 「わ~い!」 というわけで早速灯火山の麓にやってきた一行。 ピッピの話通りに山筋のなだらかな道を進む。 「あ、あった!!」 ピッピの指差す方に月の石はあった。 しかしちょっと崖から離れているので人間が行ける様なところではない。 「スピアー、取ってきてくれないか?」 「了解♪」 スピアーはある場所へ飛んでいき、楽々と月の石を持ち帰って来た。 「よし、これで2人とも進化することが出来るぞ。」 「わ~い!早く進化したいなぁ!!」 「私も私も!!」 キラキラ目を光らせる2人。 「まだまだ、進化したらそれ以上わざ覚えなくなっちゃうだろ? だから、その時までおあずけ。」 『え~!』 「早く進化できるように頑張らなくちゃいけないって事よ♪」 「そうそう、期待してるんだから。」 「……わかった!私、頑張る!!」 「アタシだって頑張るもん!!」 「それじゃ、用も終わったし温泉行くか。」 山から少し離れた所にある温泉は人間が使用する他、野生の萌えもんも入りに来るという有名所である。 一行が来た時はちょうど利用者が多い時間の合間だったのか、野生の萌えもんがちらほら見える程度でほぼ貸しきり状態だった。 「わ~い、一番乗り~!」 「あぁっ!私が一番になる~!!」 真っ先に温泉へと向かうピッピとプリン。 「おいおい、行くのはいいけど服はちゃんと畳んでおけよな……」 天然の温泉は絶好の癒しの場所であった。そのままの地形を保つために何層にも分かれており、小さい萌えもんにも配慮して底の浅い温泉もある。 野生の萌えもん達は最初警戒心を強めたが、襲ってこないとわかると気安く場所を開けた。 「むぅ~……」 ピッピがジロッとスピアーを見る。 「ん?どうしたの?」 「ないすばでーが羨ましいっ!!」 「つるーんでぺたーんってしてるから?」 プリンがからかう。 「つるぺたってゆーな! プリンだってつるぺたのくせに~!!」 「進化したらきっと大きくなるもーん♪」 「それならアタシだって!進化したらプリン以上になるんだからねっ!!」 「私の方が上っ!」 バシャンと水しぶきがあがる。 「わぁっ! やったなぁ~!! えいっ!!」 「ひゃっ! この~!!」 「ふふ、全く騒々しいんだから♪」 喧嘩しているものの随分と楽しそうである。 主人はそんな微笑ましい光景を目にしながら、ピッピ達とは違う場所の温泉に浸かっていた。 スピアーは所謂2人の保護者みたいな感じである。 ガーディはあっちの方で野生のポニータと何か話している。 タイプ一致なのか、それとも相手がポニータなのか、馬が合っているようだ。 ヤドランは……さっきから姿が見えない。 そしてサンドパンは、主人の横に寄り添って座っていた。 「どうだサンドパン? 日光浴と温泉、どっちが気持ちいい?」 「……どっちも。」 「そうか、ならよかった。」 主人が横を見ると、サンドパンは背丈1mの体で主人に寄りかかった。 「ねぇマスター。」 「ん?」 「私のこと、どう思ってる……?」 「どうって……俺の大切な仲間だ。」 「……それだけ?」 「それだけって……あぁ、じゃあ逆に聞こう。俺のこと、どう思ってる?」 「……! それは……私のこと大切にしてくれるマスターだと……」 サンドパンはもじもじし始めた。 やっぱりな、と主人は感じた。 「ほれ。」 「ひゃっ!?」 マスターはサンドパンの体を軽々と掴むと膝上に乗せた。 「な、何を……」 「髪、洗ってやろうか。」 「……あ……うん。よろしくお願い……」 主人が髪を流す。サンドパンは恥ずかしそうに俯きながら、主人が髪の毛を洗いやすくするようにする。 「……よし、終わr……!?」 突然、主人の股を水圧が襲った。 「にょ、変態ますたー! このすーぱーさぶまりん3号で撃退してやるにょ!」 「してやる~」 水面からヤドランが顔を見せた。なるほど、さっきまで姿が見えなかったのは潜っていたからか。 「こら! 水鉄砲は撃っちゃいけない所もあるんだ! 後でおしおきするぞ!!」 「わ~! ますたーの反撃だ~! にげるぞ~!」 「にげるぞ~」 「……全く。」 再び潜ってしまったヤドランを見て主人は溜め息をついた。 「……くすくす。」 「あ、笑ったな?」 「だって……面白いから……」 「笑った奴にはこうしてやる!」 「ひゃん! やめて……腰突かないで……そこ弱い……」 と、その時だった。 ドーンという大きな爆発と共に付近が揺れた。 「な、何だ!?」 明らかに何かの爆発する音だった。続けて2,3回、またも爆発音が響く。 「この音……」 「灯火山の方からか……! 行くぞ皆!」 一行は温泉から出ると、すぐさま灯火山へと向かった。 後編へ
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/1007.html
紫陽花クラス日誌。 6月6日 当番:アメタマ 今日も雨が降っていた。 クラスの金魚鉢にはコケが貼り付いて取れなくなってしまっていた。 最悪。 新しい金魚鉢を早急に買うことをオススメします先生。 今日のケガ人はふたり(百日紅クラスの奴とケンカしたカノコとガーディ)。 それ以外は異常なし。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 紫陽花クラス日誌。 6月7日 当番:ヒツギ 今日で連続一週間雨でした。 湿気も酷く、アメタマ殿の机の中から緑色になったパンが 発掘されたくらいにジメジメしていました。 今日読んだ本には、古代中国には 「真っ暗な部屋に閉じ込めて拘束し、十数分に一回のペースで 水滴を額に落とし続ける」という拷問があったと書いてありました。 水滴を額に落とすだけで、本当に拷問になるかどうかはいささか 理解できませんでしたが、その拷問を一時間ほど行われた人は 「額に鉄球を落とされている、痛い」と泣き叫び許しを請うほど だったそうです。 今日のケガ人はなし。 (若干顔色の悪そうな人はひとりいました) +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 百日紅クラス日誌。 6月8日 当番:ニドラン きょうはひさしぶりの晴れ! お日様がとても気持ちよかったです。 でもカタツムリは勘弁。気持ちわるかったぜ。 ツムギのやろうにまたボコられそうになって逃げていたら、 フシギソウが地面で寝てたので保健室につれていった。 夜更かししていたのか、よく寝ていた。 今日一番悪かった生徒:ノコッチ お昼のプリンを、だまって他の奴のぶんまで食べてました。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 金木犀クラス日誌。 6月9日 当番:ニャース 昨日に続いて今日も晴れました。 ですが空気がムシムシしていて凄く辛かったです。 自慢のヒゲもしおれてしまって、何だか嫌な一日でした。 紫陽花クラスの男子と百日紅クラスの男子がケンカしてましたが、 またディアルガ先生が「ざ・わーるど」をしてくれた おかげで無事に解決されました。 …ところで、昨日の夜なんですが、ふらふらと外に出て行く誰かの 姿を見たような気がしました。怖かったです。 (寝ぼけていたので記憶があいまいですが…) 先生、ぜひ正体を突き止めてください。安心してお手洗いにいけないです。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 紫陽花クラス日誌。 6月10日 当番:カノコ あーめあーめふーれ、じゃなくてふるなーーーーーっっ!!! じゃんじゃんざかざか降りやがって! うっとおしいったらありゃしないぜ! またアメタマの机の中からカビたパンが出てきたし! そういえば、サイカチお姉はまだ部屋から出てこないです。 食堂のおばちゃんが言うには、みんながこない時間にこっそり出てきて ごはんは食べているらしいけど…。 しんぱいだーーー 今日のケガ人、フシギんが授業中にぶったおれた以外は、なし! +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 白詰草クラス日誌。 6月11日 当番:ムウマ ニョロモに言わせると、また雨が降る日が続くらしい。 図書室の本がふやけるから、あんまり降らないでほしいです。 そういえば、最近夜中に学校を徘徊する影が頻繁に目撃されているようです。 噂では新種の幽霊萌えもんだとか言われているけれど… 早く真相が判明されることを願います。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 金木犀クラス日誌。 6月12日 当番:ヒトカゲ 「……あ゛ーーーーーーーー、日誌ったって何書けばいいんだよ…頭痛いぜ…」 紫陽花クラスのふたつ向こう側にある、金木犀クラスの教室でヒトカゲが 自慢のしっぽの火を揺らめかせ、木製の椅子に座ったまま唸る。 授業が終わった放課後なので教室内には彼以外誰も居ず、しーんと静まり返っている。 どうやら本気で日誌に何と書けばいいのか分からないらしく、自身の生命力を現す 炎の勢いが蝋燭のようにしぼんでしまっていた。 ……ごてん! 金木犀クラスの教室の前、廊下からドアごしにも分かるような音が聞こえてきた。 それは、何かがぶつかったような音。 慌ててヒトカゲが教室の戸を開け、廊下に飛び出すと… そこには大きなツボミがいっこ。 いや違う。 紫陽花クラスのフシギソウが廊下のど真ん中でうつぶせに倒れていた。 「うおおっ!? お、おい、大丈夫かお前!?」 「…んー…んあー……はっ! あ、あぁうん、平気平気! ちょっとクラっときただけだから…」 「充分やばいだろそれ! 何なら保健室まで連れて行ってやるぞ!?」 「へ、平気だよぅ……ありがと、心配してくれて…それじゃあねー…」 心なしか頭のツボミをしおれさせつつ、フシギソウはその場からフラフラと おぼつかない足取りで去っていった。 ヒトカゲは思った。 ああ、日誌のネタが決まったな と。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ この全寮制の小学校の近くには、マンションだとか、一軒家だとか コンビニだとかスーパーだとか、他の建物らしきものは一切建っていない。 周りは木や草に囲まれ、静かに水がせせらぐ川や湖がある のどかな田舎のようなところだ。 故に、夜になれば星がきらめき、月は煌々と輝く。 今宵は満月。 月明かりが暗闇を、やさしく暴きだしていた。 ふらふら、ふらふらと、夢遊病者のようなおぼつかない足取りで 月がやさしく暴き出した道を歩む影がひとつ。 影は、天に向かって真っ直ぐに伸びた、背の高い植物がたくさん生えている 花壇の前で止まった。 ぐらつきながらも影は花壇の前にしゃがみ、植物…おおきくツボミを膨らませた ヒマワリたちに手を当てて、動きを止めた。 ……ふわり…… ……ふわり…… 影が動きを止めて数十秒。 薄緑色の球状の光が、ヒマワリたちの周りを浮遊しはじめた。 その光は、ともすればホタルの光と間違えてしまいそうなくらい小さく 儚げな光だった。 しかし、小さな薄緑色の光がヒマワリたちの中に吸い込まれていくと、 虫にやられてくたびれていたヒマワリが、心なしかしゃっきりとしていくように見える。 大きなツボミを宿した影から、儚く小さな光が放たれる。 そしてそれを、ヒマワリたちが受け止める。 その度に、ヒマワリたちは生命力を取り戻していく。 しかし、ツボミ付きの影のほうは…… 「……あ、う、わ……!?」 ぐらりと大きく体が揺れる。 もはや、しゃがんでいる体を支えていることさえ出来なくなった 影…フシギソウが、地面に倒れそうになる。 しかし、その前に彼女の肩が何者かに支えられたお陰で、転倒の危機はまぬがれた。 「もう…もうやめてよフシギソウ…! もういいよ、もういいよ…もう、いいんだよぉ……!!」 「…へ、へへ…やっぱり、サっちゃんにはバレてたか…」 「当たり前でしょ…? 私、閉じこもるようになってからずっと… フシギソウがどれぐらい頑張ってたか、窓からずっと見てたもん… アブラムシを追い払う為に、花を咲かせるために…昼も夜も、 雨の日も、ずっとずっと頑張っていたの…」 バツが悪そうな笑みを、フシギソウがサイカチに向ける。 「…ギガドレインを、応用して…私の体力を、ヒマワリにあげて… 『弱った花には虫がつく』…セキが言った、あの言葉で、思いついた方法…」 未だ蕾のまま、咲く気配すら見せないヒマワリの群れに すがるような視線を送るものの。 ヒマワリは、輝く月の光に照らされ、静かに佇むだけ。 「私の体力を、ヒマワリにあげて…ヒマワリに元気になってもらって、それで アブラムシたちを追い払う……これなら、殺虫剤なんて物騒なものを 使わなくて済むし……傷つかない。 花も…虫たちも……」 「何で…なんで、そんなになるまで頑張れるの…? フシギソウはなんで、そんな…花たちのために… 倒れるまで頑張れるの…? …わかんないよ。花はいつか枯れるのに。 花は、私たちよりも早く終わってしまうのに…なんで……」 咲かないヒマワリから、級友に視線を移す。 頬から流れ落ちるふた粒のしずくが、月光でわずかに輝いている。 それは、悲しみからくる雫。 フシギソウは、知っていた。 悲しみで、自身から雫を生み出せるのは、感情を持つ生き物だけだと。 しかし、その雫は悲しみからだけではなく 歓喜からも生み出される、ということを。 それは、いつかどこかの、本人さえ忘れた思い出。 差し出されたちいさな花。 それは、フシギソウが「キレイだな」と一瞬だけ見惚れた、道に咲く花。 孤独で思い悩んでいた彼女に差し出された、友からの贈り物。 嬉しかった。 どんな気取った言葉も、おしゃれなセリフも、救いとはならなかった。 ただ、その一輪だけが 彼女の心に届いた。 彼女の孤独を溶かした。 「…花は、人間や萌えもんと違って、しゃべらない。 でも、心が崖っぷちに追い詰められたひとには、どんなに上手な言葉より ……ただ、そこに咲いているだけで、心に届くことがあるから」 級友に寄りかかり、力の入らない指先を懸命にヒマワリの茎に伸ばす。 やさしく、やさしく。 繊細なガラス細工の置物でもさわるように、フシギソウは物言わぬ花を やさしく撫でる。 「…私の、下手くそな言葉よりも…やさしい“何か”を伝えてくれるから。 だから私は、花が好き。 キレイに咲きますようにって、頑張れる……はは、変…だよね……」 いよいよ体に力が入らなくなり、級友への寄りかかりはより増して。 肩に寄りかかるだけだった体勢が、ずるずると崩れ落ちて膝枕の体勢になる。 級友の頬には、雨上がりの花びらのように沢山のしずくが零れ それにつられたのか、ツボミの少女も沢山のしずくを溢れさせていた。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ どのくらい、そうやって二人で静かに泣いていたのか。 時間は過ぎていって、月は天高く昇り ちょうど、フシギソウとサイカチのいる真上あたりで輝くようになった頃。 変化が、訪れた。 それは、ごく小さな、ほんの僅かに進んでいく変化。 されど、確実に進んでいく変化。 固く閉ざされていた蕾が、すこしずつ、すこしづつ緩んでいく。 綻んだスキマから、中に閉じ込められていた花びらが解き放たれていく。 その変化に最初に気がついたのは、以外にもサイカチだった。 フシギソウは倒れて空を見上げていたので、変化に気がつかなかったのもしれない。 まあ、時間差はあったものの、サイカチが息を呑む気配を感じた フシギソウも、花壇のほうにようやく気がつき ふたりして、無言でその光景を見詰め続けた。 花は、ふたりの観客の熱烈な視線にも照れることなく はなびらを開いていく。 白く輝く月に照らされ、花は咲いていく。 月には古来より、不思議な力が宿っていると伝えられている。 その力は、神秘の力とも狂気の力とも言われている。 そんな月の光に照らされているせいなのかどうかは分からないが、花を咲かせていく ヒマワリたちは、とても不思議な魅力を宿していた。 花びらは黄色ではなく、白色に近い銀色。 月光をよく反射する白い花びらが満開になったとき ふたりはやっと、自分が息すら止めていたことに気がついた。 「………キレイ………」 肺一杯に、忘れていた空気を吸い込んで。 フシギソウが、感嘆の言葉と共に息を吐き出す。 「……うん、すごく、キレイ……」 現実と把握できていないのか、どこか夢見ごこちな声でサイカチも 感嘆の言葉を吐き出す。 もっと語彙が頭脳にあれば、もっと気の利いた褒め言葉が出てきたのかもしれない。 今のふたりにとって、目の前の銀のヒマワリの光景は ただただ「キレイ」としか言いようが無く そして、それで充分だった。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「しんじられない。なんで、こんな夜中に…向日葵が…」 「…向日葵じゃ、ないよ」 サイカチの言葉に、フシギソウが振り返る。 月の光は、残酷なくらい二人の姿を照らし出して。 「月に向かって咲いたから、“向月葵”(ツキマワリ)…だよ、きっと」 しばらくぶりのサイカチの笑顔も、月は余すところなく輝かせていた。 「ツキ、マワリ……」 「…変、かな」 不安を滲ませた声で、月の元で咲く花を命名した少女が問う。 少女の友は、少女に負けないくらいの笑顔で 「ううん、サイコーだよ、それ」 新たな花の誕生を、共に喜んだ。 深い深い、光を吸い込んでしまいそうな暗闇の中。 それにすら負けないような、煌々と輝く月の下。 奇跡の塊のような花が生まれ、ふたりの少女がそれを心の底から笑い、祝う。 そんな、おとぎ話みたいな夜のこと。 サイカチとフシギソウ。二人の他、誰もいないと思われた夜の中。 二人から離れた茂みの陰で、誰にも気づかれていない姿がふたつ。 「…はぁ~あ、とんだ骨折り損のくたびれ儲けだよ」 「何がくたびれ儲けだ、このナマグサが。良いことづくしだろうが」 「それを言うなら怠け者じゃないの? ていうか良いことづくしなのはアンタだけだよ、三大馬鹿大将」 「その呼び方止めろっつっただろうが。もう忘れたのか芋虫が」 赤い髪の小さな影…ケムッソが睨むのは、小さいながらもどこか 冷たい部分を感じさせる少年・ツムギの横顔があり そしてケムッソの横っ面には、鈍く光る小さな鉄の筒。 ケムッソの方など微塵も見ないまま、ツムギは級友に短銃を突きつけている。 突きつけている側も、突きつけられている側も、特にこれといった 表情は顔に浮かんでいない。 まるで「こういう状態で当たり前だ」とでも言いたいような、こういう事態に 慣れきった顔だった。 「とりあえずその物騒なのどけてよ、もういいでしょー」 「こうでもしねえと仕事しねえだろテメエ 最後の最後までアブラムシどかすの渋りやがって…」 引き金から指を離し、物騒で無機質な輝きを反射する銃を パーカーのポケットの中に押し込む。 凶器の姿が消えたことに、ケムッソはやっと生き物らしい安堵の溜め息を漏らした。 「…にしてもさ、大将何だってあの子の為にここまでやるのさ?」 一文の得にもならないのに。 さっさと背を向けて帰ろうとしているツムギに、虫の少女の乾いた言葉が 浴びせられる。 そのセリフに動きがピタリと止まったが、ツムギはさして癇に障った訳でもないらしく、 凶器を構えていた時と全く変わらぬ顔で言葉を紡ぐ。 シリカゲルのようなカラカラに乾いた声色に、ほんの少しだけ人間らしい 熱を込めて。 「知るか、馬鹿野朗」 ――― これは、当事者以外誰も知らぬ夜の 誰も知らない、夜闇の裏側。
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/1226.html
「ほう……ギガドレインとはな。変わった技を覚えさせる」 「特殊アタッカー型だからね。毎日血液をギガドレインされて困ってるやつがいるけど」 「…………」 わずかな沈黙。彼は、何を思ったのか? その答えを、エドワードは知っている。 「しかしそのサンダース……目覚めるパワーの水タイプで、最高威力か……?」 「ああ。あんたの計算が間違ってなければね」 再びの沈黙。しかし、今度は小さなつぶやきが返ってきた。 「まさかな。あのイーブイが生きているとは思えん」 その意味するところを、やはりエドワードは知っている。 「ミル。竜の舞」 「わかっている」 応えたギャラドスの体に闘気が満ちるのが見て取れる。 竜の舞はスピード・パワーをともに底上げする優秀な技だ。 それを許してでもガラガラを陥落させたことに、意味がある。 地震。ガラガラは太い骨を持っているとき、そのパワーが倍加する。 そのパワーから繰り出される地震に恋歌が耐えきれるはずがない。 幸い、ギャラドスのメインウェポンであろう技に不利なのはアルバート1人。 十分、巻き返せる。 「……ガリレオ。頼むぞ?」 「それでも地球はまわっている。まわっているのだ……」 現れた、ドーブル。彼こそが、この先の問題点となる。 「ハピナス……?」 一度の雷でギャラドスを沈めた先に待っていたのは、あまりにも有名な、 そしてあまりにも強力な萌もん。特殊攻撃で彼女を陥落せしめるものは片手で数えられるより多いのだろうか? ……そして、物理攻撃ですら、強いといわれる連中のそれを受け止める。 しかし、だ。 問題になるのはその能力ではない。 本来、ハピナスはトレーナーにかなり懐いていなければラッキーからの進化ができない。 そんな萌もんを、なぜこの男がもっているのか? 「ご主人様。またあれですか?」 「ああ。ガリレオ共々、頼むぞメフィス」 そして、明らかに他人の萌もんでもない。 なぜ、なぜ、なぜ。 この男に対する疑問が尽きない。 これまでのイメージと目の前の男が一致しない。 「(惑わされるな。僕は、彼女たちの『マスター』なんだ)」 心の揺れを首に移し、打ちとめる。 「ドーブルに集中砲火!」 その選択に、間違いはなかったはずだ。 「……残念だったな」 そう、思いもよらなかった。 「まだだ、まだおわらんよ。……しねん。この程度では死ねんのだ!」 レベルが同程度のドーブルが、2人の攻撃を受けきるなどと。 「……っ、しまっ……」 「雷ならば。あるいは、命中して倒すこともあったろう。オボンの実があったことを含めてもな。」 それでも、雷は若干命中精度に難がある。 ギャラドス相手の時は雨乞いをするわけにもいかず、攻撃技が2つしかない恋歌だ。 期待値の関係上雷を選択したのだが、今度は時間がなかった。 故にはずすことのない目覚めるパワーを選択したが、それが失敗だった。 「……ドーブルの強さを、その器用さだけだと思っていた僕が馬鹿だった……!」 優秀な特攻があってもタイプ不一致威力70。 タイプ一致90でも並の特攻。 オボンの実をもったドーブルには、この両者を合わせても一歩届かない。 その防御力は、紙と呼ばれるほどではなかったのだ。並というほどではないが。 「へ~んしん、トゥ!」 「……へんしん、だと……?」 さっきハピナスは「またあれ」と言った。 つまり常に同じ戦法。状況に左右される変身が同じということは、つまり、 1ターンではほぼ落ちないタッグパートナー・ハピナスへの変身。 「(っち、おとなしく交代するか……!)」 自分の場はどちらも特殊アタッカー。次の一撃で変身ハピナスすら倒せない可能性がある。 そうなったらジリ貧だ。 「ジニー!」「ガリレオ!」 「「戻れ!」」 ……が、変身ハピナスは下げられた。 「(……何を考えて、────! 待てよ、さっきハピナスは何をした?)」 冷静さを欠くあまり、相手の行動を観測しきれていない。 だが、考えればすぐにわかる。 ハピナスが場に出てから、向こうは変身しかしていない。 そう、変身。能力値の関係上、ハピナスこそが真に使いこなせる技。すなわち。 物真似。技をそのバトル中のみコピーする技。 「(それならば、こちらには何もしていないようにも見える────!)」 ならば、次に出てくるのはおそらく、特殊も物理も硬いツボツボ。 ハピナスがツボツボに変身すれば、まさに要塞。大部分の攻撃は大した意味がなくなる。 例えばゴウカザルのインファイトだとしても、7発ほど必要な計算になる。 即興の暗算だから間違っているかもしれないが、反動で防御能力が最低レベルまで下がる数だ。 「(冗談じゃない……! そんなの突破できるやつ、いないぞ!)」 変身される前に倒さなければ……、いや、すでに遅い! 交代終了後、ハピナスは即座に変身できる。その短い時間で無傷のハピナスを倒すのは……無理だ! 「っく……アルバート!」 「ジェミニ!」 予想通り。現れたのはツボツボだ。ならば、次は。 「変身だ、メフィス!」 「言われなくても!」 一つのミスで、自らの負け筋を組み立ててしまった。 「(どうする……どうする、エドワード………………!?)」 「──ごめん、あとよろしく……」 かろうじてツボツボは撃破できた。しかし、同時に恋歌も墜ちる。 アルバートも、その毒に侵されている。 「(……くそっ──!)」 パワートリックで物理防御力と物理攻撃力を入れ替えたハピナス、否──ハピツボ、と呼んだ方がわかりやすいか。 彼女は、すさまじい重火力アタッカーと化していた。 最初こそ威力30のころがるだが、命中する限り威力は倍加していく。 最大で480──これは、大爆発にも匹敵する火力である。 加えて言うなら、タイプ一致による補正も受けているため、実際はさらに上だ。 「(──ピンクの悪魔とは、よくいったものだ……今はピンクじゃないが!)」 現在の希望は、僅かに2つ。 1つ、物理防御は通常のハピナスと大差ないこと。 それならば倒す手段はある。 2つ、転がるは若干命中率に難があること。 あるいは外れる可能性もある。 「(危険だが……かけるしかない!) 済まない、ジニー! 時間を稼いでくれ!」 クロバットの物理耐久では最低火力でのころがるでも致命傷。2発目以降の威力では1発確定だ。 「──あとで、しっかり埋め合わせして頂戴ね?」 悔しい。 彼女は、自身が場に出た意味を理解し、そのうえで、それだけで済ませてくれる。 ──少しでも外れる確率を上げるための、スケープゴート── それを、笑って貸しひとつで許してくれるのだ。 そんな彼女のためにも、絶対に負けるわけにはいかない。 いや、彼女だけではない。 自分の手持ちの少女たち。 彼女ら全員が、負けられない理由だった。 「ギガドレイン! スカイアッパー!」 ヴァージニアはハピツボの体力を少しでも削ってもらい、アルバートは先ほどのドーブルに止めを刺す。 次の転がるは、クリティカルヒット。ヴァージニアに耐えられようはずもない。 「……私は”フェイバリット”だけど、”切り札”のあなたは、負けないで頂戴ね……?」 ”最好”の彼女はマスターの作戦を理解し、後を託す。 マスターの手持ち”最強”の相棒に。 「”運命の悪戯(ディスティニー・ゲーム)”。いくよ」 凛として悟しを受け継がんとす。その名が与えたかもわからない、傍らの異能の顕現。 マスター曰く、己のそばに──STAND BY ME ──、故にスタンド。 自身と同じく、マスターにつけられた名を呼び、視線を交わす。 言葉も、身振り手振りも要らない。ただ、もう一人の自分に伝える。 自身に託した彼女と同様、理解していた作戦。 逆転の、1手を。 「凛悟。この窮地に言うのもなんだが……お前と肩を並べられて、うれしいぞ」 それは、物語などで敗北が確定している人物が言いそうな台詞。 「ええ、せっかくの初陣です。たとえ僕たちで止めを刺せなくとも、絶対に勝ちましょう」 「ああ。俺が倒れても、お前がいる。言ノ葉もいる。──勝つぞ!」 それは、毒で弱っているとは思えなほど、力強い言葉。 「”運命の悪戯”!」 叫ぶ。勝率は、低くなかった。 「……正直、頭合わせ以外のなんの役に立ったかわからんが、これでよかったのか」 「ああ、あとは──」 「──任せてください」 5ターン連続攻撃の転がるは、外れるなりして技が終了するまで最初に狙わなかった方に攻撃できない。 その狙われなかったアルバートが倒れ、場には無傷の凛悟と言ノ葉が並ぶこととなった。 ハピツボは────眠っている。 「……あくび、か? 先ほどのターン……」 「ああ。睡眠コンボ──相棒が、最強たる所以だ」 持久戦に持ち込むコンボ。持久戦に耐えうる耐久力と、使い勝手のいい攻撃技。 そして、もうひとつの要因。 それらが合わさって、普通なら勝てない相手にも十分勝ちうるからこその、切り札。 「言ノ葉。腹太鼓」 「はい」 そして、最高の攻撃力。この状況で、もはや負ける可能性は、ゼロだ。 「……あなたは覚えていないかもしれません。ですが、それでもいいんです。 あなたのおかげで、ご主人様に会えました。アルバートさんにも会えました。 みんなの会えた、その恩で、あなたに勝ちます」 恩返し。使い手の感情がそのまま威力に比例する技。 その最高威力をハピナスに叩きつける。 「”運命の悪戯”」 凛悟が最強たる最後の要因……強運の助けを借り、一撃のもとに、勝利を手にする。 彼は、笑っていた。 「さて、何を聞きに来たのかな?」 「とぼけるな”Lord”頭領。イーブイに行った人体実験、萌もんの人身販売、 ……そして、オツキミ山萌もん一家殺人事件。僕の手持ちを見て、わからないとでも言ってみろ」 殺してでも。その瞳は、そんな狂気をたたえた光を放っている。 「フ……いかにも。イーブイに実験を施したのも。ジグザグマを売り渡したのも。 オツキミ山で、ある萌もんの一家を皆殺しにしたのも。 すべて、私がやらせた」 一つの巨大な組織の頂点に立つ男は、悪びれもせずに言い放った。 「……そんな男が、なぜギャラドスなんて萌もんを育てた? シオンのガラガラを手懐けた? ハピナスに進化させることができた?」 だからこそ、この戦いでの疑問が増す。 そんな男の手持ちにふさわしい萌もんたちではない。 「もうわかっているんだろう? 私が、少なくとも”悪”ではないことぐらい」 だから、そう言われたとき、つい頷きそうになった。 そんなこと、認められない。彼女たちの悲劇は、こいつが仕掛けたのだから。 「そうだな。イーブイの実験から話そうか」 「……」 断る理由はなかった。こちらも、真実をすべて知っているわけではなかったから。 「そのイーブイは先天的な欠陥をもっていた。そのままでは、1年と持たなかったろう。 その命を救うため、私達はあることを決めた。 それは誰も試したことのないものでな。成功するかもわからなかった。 これを実験といわずして何と言おうか?」 あまりにもあっさりと語られるそれは、しかし嘘ではないと理解できた。 イーブイを自分に託した相手……マサキが、昔は体が弱かったと言っていたのを思い出した。 「まぁ、そのイーブイはアフターケアを受ける間もなく連れ去られ…… 誰もが、彼女は助からなかったと思っていた。なにせ、遺伝子操作した肉体との融合だなど…… 碌な研究もなしに成功するものではない」 だが、成功した者がいた。マサキその人である。 彼がイーブイを連れ去ったのかはわからない。それでも、彼が融合装置の開発に成功していた。 それが彼女を救ったのは、疑いようがないだろう。 「……そのイーブイが、今サンダースに進化してここにいるわけだ。 知れば大喜びで泣きながら抱きつきに来るやつが全員残ってる」 1つ目の真実は明らかになった。次は、 「さて、ジグザグマの話だが……彼女は、この地方には野生では存在しないこと以上に、 希少価値の高い理由があった。知っているはずだ」 言わずものがな、それがあるからこそ、彼女は第一線で活躍している。 「──神速」 「そうだ。通常どうやっても覚えられない技を覚えていた。だからこそ、売り払うふりをして、 信頼できそうなトレーナーに託したのだ。500円などという価値でもなければ、 お前のような正義感の塊にわざわざ売りつけるバカもおるまい?」 確かに、よく考えればわかったことだ。だが、 「それでも、人身販売に変わりはない。彼女自身が許していなければ、僕は絶対に許さなかった」 「ああ。急を求めるあまりに、次善の策をとったのは事実。それは弁明するつもりもない」 どうしようか。なんだかものすごい勘違いで迷惑かけたのかもしれない。 そう思いつつも、すべてが解決するまで頭を下げようとしないあたり、 自分は案外頑固だったんだな、と柄にもなく感慨にふける。 「最後の、一家皆殺しだが」 そこで言葉を切られる。なにがあるというのか。 「……聞いているのが、そこのカメックスとマッスグマだけであることに感謝すべきかもしれない」 「……どういうことだ?」 尋ねても、返ってくるのはわずかな溜息。……黙って聴け、といいったところか。 「……奴らは、人、萌もん問わず襲いかかって吸血する凶悪な萌もんだった。 他のゴルバット種からも嫌われていて……復讐の連鎖は、起きないはずだった」 「復讐? まさか、」 耐えきれず、口をはさんでしまう。 だって、それなら、彼女の家族はみんな、 「そうだ。私達の仲間が殺された。それでも、誰が死んでも悲しむつながりの輪が小さく、 しかもそのすべてが復讐の対象。そこまでわかってからとはいえ、ただ感情のままに奴らを殺した。 まさかその輪から見落とした、幼く何もできない少女が一人、家族のすべてを失ってしまうとは知らずにな」 「自己紹介がまだだったな。お察しの通り、丸見え秘密結社”Lord”のトップ、公爵だ」 秘密結社という割に一般人のエドワードが知っているあたり、確かに丸見えである。 なぜか備え付けてあった萌もん回復マシーンで手持ちを回復させながらの会話だ。 「それだけ? 本名は?」 「ここにいる奴は、たいてい知られたくない過去を持ってるんでな。コードネームや、 こう呼んで欲しいといった名前で呼ぶのが通例だ」 いかにもそれっぽいルールである。つい興味がわいてしまうのも無理もないだろう。 「僕もなにかそういった呼び名がほしいな」 「なに、お前が私達の仲間になるというならつけてやろうではないか」 何の気なしに言ったのだが、妙な方向に捕らえられてしまった。 しかし、敵対する理由もすでにない。 むしろ、公爵の人柄に何か惹かれるものを感じ始めてすらいるのだ。 ──悪くないかもしれない。 「……手持ちが反対しなければ、そうさせてもらおうかな」 思うが早いか、そう言っていた。 思わず口に手を当て、自分が何を言ったのか反芻したが、取り消す気は起きなかった。 「……ふむ。本気ではなかったが……まぁ、仲間が増えるのはうれしい限りだ。 ただし、私達は決して堅気な商売ではない。それは忘れないでくれ」 「というわけで反対の人は挙手」 意外にも挙がったのは1つだけだった。 「……俺は博士の助手でもある。あまり裏に利く顔は持ちたくない」 「言ノ葉との将来のために?」 「やだ、ご主人様! 気が早いですよ!?」 だいぶ普段の調子が戻ってきている。 それを見て凛悟は、ああ、また騒がしい時間が戻ってくる、と他人事のように考えていた。 突っ込み役の彼はブレーキも兼ねているため、仕事をさぼっているといつまでもアルがいじり倒されることになる。 だから大きく息を吸い込み、こういった。 「ヌルポ!」 「ガッ!」 思いっきり叩かれた。仮にも人間の力なのだし、甲羅に当たったので凛悟は痛くないが。 「で、反対1票なんだから決行するんでしょ?」 「Of course」 このマスターは生真面目な奴ほど振り回される。 いい加減、自分も染まりきってしまおうかな、とか思ってる自分が末期であることを確認し、 「日本語でおk」 ネタをもってネタをせいしてみた。 わずかな沈黙の後、大爆笑。そんなに笑わなくてもいいじゃないか。 笑いが収まる頃には、こんなことをいった。 「ハハハ、ハ……はぁ。さ、いつもの僕らに戻ろうか」 まだ戻ってないつもりだったのか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ~あとがき~ まじめその2。 今回は電卓とデータ片手に頑張りました。実際のゲームとそこまで違うダメージはないはずです。 ロケット団がいない? 主人公がジムリーダーになったssがあったからからませられたらいいな、 とかそんな感じでロケット団は出てきません。ご了承ください。 さて、次回からはまたネタのデパートに戻りたいです。 たぶん新キャラ登場何で若干控えめになるだろうけど。 ではまた次回で。ポケダン大好きなんだ☆730でした。
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/1398.html
「…あ、そうそう! リュウマさん…で間違いないですよね……?」 「ん? あぁ、リュウマで間違いないが?」 「私、あなたを探してる人に会ったの!」 「本当か!?」 「うん。つ…付いて来てくれる……?」 「おう!」 ここでまさかの手持ち情報ゲット! これでもう見つかったも同然、一安心。ラピに感謝感謝。 ただ、あいつらが無駄にそこらじゅう駆け回ってなければいいのだが…… 「良かったね、リュウマ」 「あぁ、ホントに助かったよ。ありがとな、二人とも」 「「どういたしまして!」」 二人は声が揃ったのに少し驚き、互いに笑い合った。 その光景がとても微笑ましく、ついつられて俺も頬が緩んでしまう。 「二人とも、本当に仲がいいんだな」 「そう? まぁ、ラピとはけっこう長い付き合いだしね」 「もう! そこは素直にうんって言うとこでしょブイブイ!」 「え? あ、うん。…それで、なんで怒ってるのさ?」 「え、あ…な、なんでもないって!」 「……? それならいいんだけど……」 …この鈍感っぷり、ある意味相当重症だろう。 果たしてブイゼルがラピの想いに気付く日は来るのだろうか…… …と、下らない事を考えていた時だった。 「がぁっ!」 「リュウマ!?」 突然背中に強い衝撃が走って視界が青空に変わったと思うと、 俺は勢いよくヘッドスライディングするような体勢で吹っ飛んだ。 傍から見たら、急加速して綺麗なフォームで飛んでいく変な人に見えたに違いない。 「いっててて……」 「リュウマ、大丈夫?」 「あぁ、なんとかな……」 ブイゼルの手を借り、痛む背中をなだめつつ起き上がる。 先程俺がいた場所を見ると、複数の岩が転がっていた。 そしてその奥に見える茂みからは何者かの高笑い。 こんな事をするのは…… 「はっはっはー! どうだ人間めー! あたちの力を思い知ったかぁー!」 …やはり先程のイシツブテであった。 どうやら一眠りさせられてもまだ懲りてなかったらしい。 「いきなり何するんだよ!」 「よそ見してる方がわるいんだよぉー」 「くっ……!」 確かにイシツブテの意見はもっともだが、いきなり岩を投げてくる方もどうかと思う。 そしてその不意打ちを見て怒りをあらわにするブイゼル。 今にも電光石火を放ちそうな気迫である。 「今日という今日は絶対に許さない!」 「これまであたちに勝てた事ないくせにぃー。それっ!」 「なんのっ!」 イシツブテが岩を投げるのと同時に、ブイゼルが電光石火で攻撃を仕掛ける。 先程と同様、ヒットアンドアウェイの繰り返しだ。 しかしこれでは埒が明かない。それは戦っている本人も分かっている事だろう。 何か打開策はないものか、と考えていると…… 「リュ…リュウマさん、わ、私リュウマさんの手持ちのみんな呼んでくる!」 「お、その手があったか。分かった。よろしく頼む」 「は、はいっ!」 …その手があったのをすっかり忘れていた。 手持ちの皆を呼んでくれば、あの強情なイシツブテも観念して帰ってくれるはず。 そう頭の中で策を確立し、ラピを見送る……が。 「くらえぃ!」 「そんなの当たらないよ!」 「…マズい!」 イシツブテが投げた岩の流れ弾がラピをめがけて飛んできた。 これは確実に直撃コース。飛行タイプがこれを受けたらただでは済まないだろう。 更に不運なことに、ラピは後ろを向いているのでその事に全く気付いていない。 無防備な状態で食らう事になるので、ダメージは計り知れない。 俺はそれに気付いてすぐに駆け出したのだが……ダメだ。間に合わない! 「ラピ! 伏せろ!」 「えっ…きゃあっ!」 イシツブテの投げた岩が放物線を描き、ラピに向かって落ちていく。 俺の努力もむなしく、それはラピに命中……するはずだった。 「なっ……!」 一瞬青い光が横切ったと思ったら、ラピに命中するはずの岩が消えていた。 このどこかで見覚えのある光は、まさか…… 「ふぅ……間に合ったみたいですね」 「ハクリュー! 助かった!」 「はい。リュウマさんもご無事で何よりです」 …やはり今のはハクリューの竜の波動だったようだ。 昨日の温泉騒ぎでのインパクトが強かったため、忘れように忘れられない…… …まぁそれはともかく、ハクリューの参戦により、負ける要素は微塵もなくなった。 これで俺達の勝利……と思ったのだが。 「…あれ? イッシー?」 「あ、リューちゃん。何やってるのぉ?」 「え? ハクリュー、お前こいつと知り合いなのか?」 「知り合いも何も。彼女は私の友人です」 「そうだったのか……」 …ここでまさかの友人発言。こんなの全く想定外だ。 でも、これで争う理由はなくなったし、結果オーライだろう。 …しかし。 「たとえリュウマの仲間の友人でも、僕は許したわけじゃない!」 「ちょ…ちょっとブイブイ、落ち着いてよ!」 「落ち着いてる!」 「落ち着いてないよ!」 …まぁ、やっぱこうなるよな。これまで一度も勝てた事がない相手なら尚更である。 俺だってそんな理由で負け越しの相手と和解しろと言われても納得しないだろう。 だが、そうも言っていられないので"アレ"を使う。 「なぁブイゼル、今回はコレあげるからさ、見逃してやってくれないか?」 「……!」 俺が差し出したのは先程もブイゼルに渡したオボンの実。 残りの三つを全て渡して和解を試みてみる。 先程もっと欲しそうな顔をしいてたから、多分食いついてくれるとは思うが…… 「…わ、分かったよ。今回だけだからね」 「サンキュ。そうしてもらうと助かる」 餌付け…いや、和解成功。なんとか丸く収まった。 だが、このままの関係だと今後がまだ心配だ。 何か対策を打っておかなければ……と思っていた矢先。 「イッシー、あなたまた悪戯してたんでしょ」 「うっ……!」 「そんな事ばかりしてるなら、私ももうあなたの側から離れます」 「ま…待って! 違うのぉ! お願いだから見捨てないでリューちゃん!」 「それじゃあ相手にちゃんと謝って。それからもうしないって約束して」 「わ、分かったよぉ……」 どうやら向こうは向こうでハクリューがイシツブテに灸を据えてくれているようだ。 こちらもこちらで落ち着いたし、これでもう同じような事は起こらないだろう。 そして一通り話が終わり、ハクリューとイシツブテがこちらにやって来る。 「ごめんねブイゼル君。実はこの子、ご両親がいなくて生活が苦しいの。 だから色々迷惑かけちゃったかもしれないけど、許してあげてくれないかな?」 「…そうだったんだ。君も一人だったんだ」 「べ、別にあたちは一人でも……」 「大丈夫じゃなかったから迷惑をかけたんでしょ? ほら、ちゃんと謝りなさい」 「うぅ……ご、ごめんなさい……」 イシツブテの素直な謝罪に驚き、少し考え込むブイゼル。 そして、彼がイシツブテに返した言葉は…… 「許さない」 「え……?」 「ブイブイ!?」 「さっきも言ったでしょ? 絶対に許さないって」 「だからって、それはないよ!」 「ちょっとラピは黙ってて」 「むぅ……」 彼の真剣なまなざしに、従わざるを得ないラピ。 多分ああなったブイゼルは止められないと分かっていて黙ったのだろう。 そして再びブイゼルはイシツブテの方を向き、話を続ける。 「…さっきも言った通り、許さない。だから、いつかリベンジさせてもらうよ」 「リベンジ……?」 「そう。僕が勝つまで付き合ってもらう。嫌とは言わせない」 「な、なぁんだ。そういう事ならあたちだって手加減しないよぉ?」 「臨むところ。こっちも本気でいくよ」 「かかって来なさぁい!」 「もちろん、今じゃないけどね」 「がくっ」 …一時はどうなるかと思ったが、これにて一件落着の様子。 もう以前のようなカリカリとした雰囲気はない。 これで本当に一安心……と思ったが、大事なことを忘れていた。 「そうだハクリュー、ポニータ達は?」 「あ、はい。今呼びますね」 「へ? うおっ!」 そう言い終わるや否や、空に向かって竜の波動を放つハクリュー。 するとその何秒かした後…… 「…ューウ兄ぃぃー!」 「ぐはっ!」 背後から何か聞こえたと思うと、突然背中に走る強烈な衝撃。 まぁ、犯人は言うまでもなくポニータであるのは明白だ。 「探したんだからっ! 本当に探したんだからぁっ!」 「あいてて……探した? お前の聴力ならすぐに見つけられたんじゃないのか?」 「見つからなかったから心配したんだよっ! うわあぁぁん!」 「……? まぁいいか。最終的に見つかったんだしな。心配かけて悪かった」 ちなみにポニータは、ずば抜けて聴力がいい。 普通このような環境ならば何キロか先の音や会話も聞き取れる。 が、今日は多分調子が悪かったのだろう。実際そういう日もあるようだし。 …胸元で泣きじゃくるポニータをなだめつつ、ハクリューと話を続ける。 「それでハクリュー、実は俺、記憶が飛んでどうしてこうなったか全く覚えてないんだ」 「えぇ!? 大丈夫なのですか?」 「あー、まぁ取りあえずは。それで、一体全体どういう事なんだ?」 「…はい。それについては一言で言うと、事故ですね」 「そうだろうとは思ってた。で、クウとオニドリルの様子は?」 「今はフスベのセンターで治療中です。彼女達も無傷では済まなかったので」 「そうか。それじゃ、すぐそっちに向かおうか」 「はい!」 一通り今後の方針を決め、ブイゼル達の方に向き直る。 短い付き合いだったとはいえ世話になったのだから、きちんと礼を言わなくては。 「…それじゃ、俺達はこの辺で。ホントにありがとな。助かった」 「ううん。こちらこそ色々学ばせてもらったよ。ありがとう」 「ラピもイシツブテも、またな。仲良くやれよ?」 「「はーい!」」 「じゃ、また来るよ。元気で……」 「あ…ねぇ、リュウマ」 「ん? なんだ?」 丁度出発しようとしたところ、またしもブイゼルに引き止められた。 今日これで何度目だろうとか思いつつ、ブイゼルの呼び掛けに足を止める。 「えっと、あのさ……ううん、なんでもない。また来てよね」 「あぁ。今度来る時はまた何か木の実持って来てやるよ」 「うん。楽しみにしてる」 「おう! そんじゃ、またな」 「ま、またね」 …何か言いたそうな様子だったが、一体何を言いたかったのだろう。 少し気になったが、それはまた今度来た時に聞く事にする。 そうして俺達三人は再びフスベシティへと向かうのだった。 …向かうのだったが。 「…なぁポニータ、いつまで俺にくっついてるつもりだ?」 「……」 「ポニータ…って、寝てるよオイ……」 「安心して眠くなっちゃったんですかね?」 「勘弁してくれよ……。ハクリュー、ボールは持ってきてないか?」 「すみません。忘れてきてしまいました……」 「そっか……じゃあ仕方ない。背負って行くか」 …………。 …ブイゼル達と別れて数分後、俺達一行はフスベシティに到着した。 そして着いて早々センターへ向かうと、そこには見慣れた少女の姿が。 「リュウマさーん」 「お、ラプラス。すまないな。色々迷惑かけちまったみたいで」 「いえいえー。無事で何よりですー」 「あぁ。ありがとな。…それで、クウとオニドリルは?」 「はいー。こっちですー」 立ち話もほどほどに、ラプラスに先導されてセンターに入る。 いつもなら入ってすぐ横の腰掛けに皆集まっているはずなのだが……誰もいない。 「こっちですよー」 「そっちって……個室か?」 どういうわけか今日ここに泊まる予定はないのだが、個室を借りているらしい。 もしかすると二人とも結構なケガをして寝込んでいるのかもしれない。 そう考えると急に心配になり、速足で個室へ向かう。 そしてその個室の扉を開くと、そこには…… 「zzz……」 「……」 …だらしない格好でベッドで寝ているオニドリルが二人。 彼女らの体に怪我といった怪我は特に見当たらない。 即座にどういう事かラプラスに問おうとし、慌ててラプラスが説明する。 「えーっと、これは今日一日は安静にしてろと言われてですねー……」 「なんだ、そういう事か……。まぁ取りあえず、大したケガもなくて一安心だな」 「はいー」 なんだか心配して損したような気分だが、とにかく大事に至らなくて良かった。 安心したついでに、背中で寝ているポニータも二人の寝ているベッドに降ろす。 別に重いと言っているワケではないが、流石に背負いっぱなしもキツいしな。 そして今日は仕方ないのでここで一泊せざるを得ないのだが、さて、どうした事やら。 …と、今後の予定を考えていると、一人個室の外へ向かうハクリュー。 「…それでは、私はこれにて失礼しますね」 「え? 失礼するって、どこに行くんだ?」 「あ…ごめんなさい! 記憶をなくされてたのですよね。失礼しました」 「あー、ごめんな。どうにも思い出せなくてさ」 「いえ、事故なら仕方がありません。ではもう一度お伝えします」 忘れてしまった俺のために嫌な顔一つせず、もう一度教えてくれるハクリュー。 他の手持ち達なら確実に「えー」とか「めんどくさーい」などと言うだろう。 そういった意味では、本当にこの子を仲間にして良かったと思う……が。 「私、リュウマさんの手持ちから外れます」 「…へ?」 「どうしてもこちらで手放せない用事ができてしまったので、申し訳ありませんが……」 「あ…あぁ、そうなのか……。分かった。それなら仕方ないよな……ハハ」 …きっと親友に裏切られた時やフラれた時の気持ちってこんな感じなのだろう。 それくらいハクリューがパーティーから外れるのはショックだった。 せっかく俺の苦労を分かち合ってくれる仲間ができたと思ってたのに…… 「あ、ですがポケギアで呼び出してもらえればいつでも駆け付けますので」 「え? ポケギア…って!」 そう言ってハクリューが見せてくれたのは、どこか見覚えのある羽根型の小さな機械。 見た瞬間犯人は分かったが、当の本人は寝ているので後ほどまた問い詰めるとする。 「…ではそろそろ失礼しますね。本当にごめんなさい」 「あぁ、気にしなくてもいいよ。それじゃ、またな」 「はい。それではまた」 「元気でねー」 「ラプラスも元気でね」 ハクリューは扉の前で俺達に一礼し、部屋を出て行った。 正直こんなに早く手持ちから離れるとは思ってなかったが……仕方ないか。 無理させてまで来てもらうわけにもいかないし。 「…じゃ、この際だ。俺達もゆっくり休むとしよう」 「はーい」 …というワケで、結局俺達はセンターで一晩暇をもてあそぶ事となった。 本来の旅路からかなり逸脱してしまったが、まぁたまには道草もいいだろう。 何事も予定通りいくとは限らないし。焦っても失敗するだけだ。 …そう開き直りつつ、再度俺は惰眠をむさぼるのであった。 …………。 「リュウ兄ー! 朝だよっ! おっきろー!」 「え…朝? マジで!?」 ポニータに毛布を剥ぎ取られた事などお構いなしに、慌ててベッドから飛び起きる。 しかし窓越しに外を見ると、空は茜色に染まり、カラスが数匹羽ばたいて鳴いていた。 おまけに町中では子供達がわいわい騒いで遊んでいるではないか。 「…朝にしては随分賑やかだなぁ、ポニータ?」 「あはは……こうでもしないと目が覚めないかなぁーって思ってさ!」 「いやそんな事しなくとも……はぁ、まぁいいか。で、何かあったのか?」 「あ、うん。ちょっとこっち来てっ!」 「お、おい!」 有無を言わさず強引に手を取り引っ張るポニータ。 そのまま俺はセンターのエントランスまで引きずり出された。 するとそこにいたのは安静にしていなければならないはずのオニドリル。 今度は一体何を企んでいるのやら…… 「ドリちゃーん、連れて来たよっ!」 「ご苦労ご苦労」 「ご苦労って……寝てろよ怪我人」 「だって暇なんだもーん。もう怪我もなんともないし!」 「そういう問題じゃないっての。いいから寝とけ」 「ふーん……そんな事言ってもいいのー?」 あー、こりゃ確実に何か企んでる時の目だ。 こうなるとただでは部屋に戻ってくれないだろう。 仕方がないので、今回は素直に聞いてやる事にする。 記憶がないとは言え、墜ちた原因が俺かもしれないから逆らえないというのもあるが。 「…分かった分かった。話だけは聞いてやる」 「よし! そうこなくっちゃ! じゃ、ラプー、よろしくー!」 「はーい」 オニドリルの合図で待ってましたとばかりに外からラプラスが入ってくる。 …人の背ほどの高さがある謎の歩く雪ダルマを引き連れて。 「…これは?」 「それを当てるのが今日のクイズ! 制限時間は一分! はいスタート!」 「いやオニドリル、クイズとかいいから早く中のやつ出してやれ。凍え死ぬぞ」 「えー!?」 せっかく経験者の俺が忠告してやっているのにこの反応である。 こいつは死人が出てからでないと危険だというのが分からないのだろうか。 …そうこうしている内に、その雪ダルマは力尽きたのか、ぼてっと倒れてしまった。 「わっ! ちょっと、大丈夫!?」 「ほら言わんこっちゃない。早く出してやれ。ポニ……いや、やっぱ俺がやる」 ポニータに頼もうとしたが、さすがに室内で火を使うのは危ない。 それに中のやつも下手をすれば火ダルマになりかねないし…… …とか思いつつ雪ダルマを崩していくと、そこには見覚えのある萌えもんの姿が。 「…って、ブイゼル!? 大丈夫か!?」 「ゲホゲホッ……あ、リュウマ? 僕ならなんとか大丈夫。それより……」 「あぁ、分かってる。ラプラス、オニドリルを氷漬けにしてでも部屋へ連行!」 「え? そういう意味じゃ……」 「はーい。ふふふ……」 「ちょ、ちょっとラプ? 目が怖いよ? ま、待って! こっち来な…いやあぁぁ!!」 …………。 「…さて、これで邪魔者はいなくなったな」 「むごいね……」 さすがに今回の悪戯は度が過ぎた。下手をすれば大事故になっていたろうに。 故にあいつにはこれくらいお仕置して分らせておかねばなるまい。 これでも軽いくらいだが、やり過ぎても可哀相だし、一応怪我人だしな。 「ごめんな、あのバカが変な事して」 「ううん、もう大丈夫。それに騙される僕もまだまだ未熟だし……」 「いやいや、どう考えても悪いのはオニドリルだから。な、ポニータ」 「うん。今回のはちょっとやり過ぎだったね……。ごめんねブイゼル君」 この様子だと、今回ポニータはあまりこの騒ぎに関与していないらしい。 この子だけでもまともな思考を持った子がいて本当に良かった…… 「じゃ、あいつは後で俺がきっちりシメとくからさ、安心して帰るといい」 「え? あ…うん。冗談だったんだよね……」 「ん? 何がだ?」 「う…ううん、なんでもない。それじゃ……!?」 何か言いたそうなまま帰るブイゼルだったが、ポニータがそれを止める。 彼女の目は真剣そのもので、何かをブイゼルに語りかけているかのようだった。 するとその目に感化されたのか、やがてブイゼルは再びこちらに向き直る。 そして、意を決した表情で話し始めた。 「…あのさ、リュウマ」 「お、なんだ? 急に改まって?」 「実はさ、僕……」 「実は?」 「…僕、君と一緒に旅がしてみたい。だから、僕を君の仲間にしてくれないかな?」 「え……」 「よしっ! 合格だよブイブイ! これからよろしくねっ!」 「……」 俺の返事も待たずにサムズアップのポーズでブイゼルを歓迎するポニータ。 ホントこいつの先走り癖はどうにかならないものか…… でもブイゼルがここに来た時点でこうなるのは大体予想出来てたし、まぁいいだろう。 「…本当?」 「あぁ、本当だ」 「今度こそ冗談じゃない?」 「冗談はこれまで誰かさんに嫌ってほど聞かされてきたから嫌いだ」 「う、うん……」 何の試練だかは知らないが、取りあえず合格したと伝えると黙ってしまうブイゼル。 特に思い当たる節はないのだが、何か悪い事でも言ってしまったのだろうか? 「…ブイゼル?」 「あ、ごめん。何か夢を見てるみたいでさ、実感がないんだ」 「夢なんかじゃないって。なんなら、一発デコピン入れてやろうか?」 「う…ううん、それは遠慮しとくよ」 そこまで仲間になれたのが嬉しかったのだろうか……と思ったが、 これまで彼は一人で生きてきたのだし、これが当然の反応なのかもしれない。 だから、俺はこれからブイゼルに仲間と共に生きる喜びを教なくてはならない。 それが俺にしてやれる彼への最善の行いであり、義務である。そう思った。 「…じゃ、改めてこれからよろしくな、ブイゼル」 「うん。こちらこそよろしく、リュウマ、ポニータ」 「うん! 今日からよろしくねっ!」 …こうしてまた一人新しい仲間を迎えた俺達一行。 まだ旅に出て数日しか経っていないが、かなり内容の濃い旅路だと思う。 まぁ、これからも多分こんな事がたくさん起こるのだろうが。 …取りあえず、もういい加減道草とかしないで普通に旅がしたい。 それが、まだまだ続くであろう旅に向けて俺が願う事である。 ~あとがき~ こんにちは、ポエルです。 前編と後編の2部に分けるとか言いながらこの有様です。ごめんなさい。 次はもっと短く纏められるよう努力します。多分。 …さて、今回は新入りブイゼルが仲間入りするまでの経緯を書かせてもらいました。 彼は幼い頃に両親を失い、生きる知識を教わらないまま取り残されたという設定ですが、 その知識の半分程度はラピに、その他は自力で習得してしまったという頭の良い子です。 それ故に普段は冷静で何事にも動じない大人しい性格ですが、もちろん欠点もあります。 ラピとしか関わりを持たなかったという時点で大体目星はつくとは思いますが…… では、いつもながらこのような作品を見ていただきありがとうございました! 今後もペースはともかく頑張りますのでよろしくお願いしますっ!